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FIM移乗スコア:1~7:どの段階が一番転倒しやすいと思う?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

移動能力がほぼ自立している脳卒中患者は転倒の危険性が高い

Kato, Yoshitaka, et al. "Stroke Patients with Nearly Independent Transfer Ability are at High Risk of Falling." Journal of Stroke and Cerebrovascular Diseases 31.1 (2022): 106169.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 脳卒中患者の入院中の移乗能力と転倒リスクとの関係を検討する。

[方法] 同一病院内の急性期病棟から回復期リハビリテーション病棟に転棟した脳卒中患者237名をレトロスペクティブに登録した。インシデントレポートを用いて、転倒率および転倒時の活動状況を、Functional Independence Measure(FIM)転倒スコアで評価した転倒能力別に検討した。全患者とFIM移乗スコア1-3,4-5,6-7の3つのサブグループにおける転倒率の隔週での時間推移と転倒時の活動状況を調査した.さらに,転倒患者を対象に,入院時,初回転倒時,退院時の移乗能力の変化を検討した.

[結果] 転倒率はFIMトランスファスコア4の患者で最も高かった(14.3回/1000人・日)。FIMトランスファスコア1の患者の転倒は、活動状態である「ベッド上」と「座位」で多く発生し、FIMスコア7の患者の4分の3は「立位」と「歩行」で転倒が発生していた。全体として転倒率の縦断的な傾向は認められなかったが、FIM移乗スコアによって転倒率の傾向は異なっていた。転倒した患者の大半は、入院時には移乗に全介助を必要としたが、退院時には介助を必要としなかった。

スライド2

✅ 図. 患者の移乗能力による転倒率と転倒時の活動状況
A:機能的自立度評価(FIM)移乗スコアごとの転倒率、B:FIM移乗スコアごとの転倒時の活動状況。転倒率は1000人日あたりの転倒数で示した。数値は各FIMトランスファスコアにおける転倒率(転倒回数)で示した。

[結論] 転倒リスクは、様々な移乗能力を持つ患者の間で異なっており、最大のリスクは、移乗に最小限の介助を必要とする患者であった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

人生には、いろんな節目がある。
小学校入学、結婚、・・・etc。
そして、それぞれの節目は自由度がある分、脆弱になりやすい。

人生を一本の棒のようなものに見立て、結婚を「関節をつくるみたいなもの」と表現。「それを折れないようにするために関節を設けるじゃない。そうすることで自由度が増すじゃない。でも関節のところが一番けがしやすいのよね」と、えてして様々なことが起きてしまうものだと語った。
松本人志 ワイドナショーにおいて

そして、その節目の1つに「移乗動作の自立」がある。
これも例外ではなく、やはり節目が(自立への移行期)一番危険だった。
仕組みを考えてみた。

運動量と動作能力、それらと転倒リスクの高さのイメージグラフを作成した。
運動量と転倒リスクは比例する、ベッドレストは安全、屋外歩行は危険。
また、動作能力と転倒リスクは概して反比例する、これも異論ないだろう。
さて、このグラフを用いて仕組みを考えてみよう。

スライド3

FIM1:ベッド上安静 → 動かなすぎて危険ではない(運動量過少;図P1)
FIM7:完全自立 → 動くが十分に動けるから危険ではない(運動能力大;図P2)
両極端のどちらも、実際の転倒は起こりにくいと考えられる。
実際の転倒が起こりやすいのは、運動量と運動能力の交差点だ(図P3)。
つまり「動作能力が高まってきたから動き始めたけれど、まだ動作能力は十分ではない」という状態が、一番危険というわけだ。

なんだって、そうだ。
生まれたての動物、自転車の漕ぎ始め、事業のスタートアップ、信長の桶狭間・・・。
動き始めに、動く量の増え始めにこそ、最大のリスクが存在する。
その一例が、リハビリテーション分野から示された。
セラピストとして何ができるか、これから考えてみようと思う。

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