トランジショナルケア:4つのチャンク構造が明らかに。
▼ 文献情報 と 抄録和訳
高齢者の病院から自宅への移行を支援するための移行介入の有効性:システマティック・スコップ・レビュー
O’Donnell, Renee, et al. "The effectiveness of transition interventions to support older patients from hospital to home: a systematic scoping review." Journal of Applied Gerontology(2020): 0733464820968712.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景] 高齢者の病院から自宅への移行を支援する介入は、老年期のニーズに応えることができる。しかし、このエビデンスベースは断片的である。本レビューでは、高齢者の退院前後の支援を行う移行期の介入について説明し、健康と福祉の向上に向けたその実施と効果を評価する。
[方法] 高齢者の健康と福祉のアウトカムを改善し、病院の再入院率を低下させるために、移行期の介入がどの程度有効であるかを検討した論文を対象とした。
[結果] 20件の研究が組み入れ基準を満たしていた。4種類の介入が確認された:教育に基づく介入(10/20)、目標指向型の介入(4/20)、運動に基づく介入(4/20)、社会的支援に基づく介入(2/20)であった。
✅ トランジショナルケア、4種類の介入チャンク
■ 教育介入:20件の研究のうち10件が教育的介入を実施し、患者に情報、教育、戦略、および/または患者の特定の診断と全般的な健康を管理するために調整された技能を提供した。
■ 目標志向の介入: 20 件の研究のうち 4 件が目標志向の介入を実施した。これらの研究のうち3つは、様々な医療診断(心不全、冠動脈疾患など)を受けた患者を対象に、栄養強化、身体活動の増加、不健康な習慣の中止など、一般的な健康ベースの目標を特定し、達成するために取り組んだ。
■ 運動への介入:20件の研究のうち4件が運動介入を実施し、患者が一般的な体力と幸福感を向上させるための基礎的な身体運動を達成できるよう支援した。
■ 社会的支援の介入:20 件の研究のうち 2 件は、社会的支援モデルのケアを採用し、参加者に交友、励まし、情報カウンセリングを提供するものであった。
教育と目標志向型の介入は、健康と幸福のアウトカムを改善するのに有効であった。病院での再入院を軽減するための介入の影響については結論が出ていない。また、実施方法を検討したのは5件のみであった。
[考察] 病院から在宅へ移行する高齢者は、セルフケアの能力を促進するために、それぞれの状況に合わせた教育と目標指向型の介入から恩恵を受けるであろう。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
トランジショナルケアといわれて、どう思うだろうか?
「大事だとは思うんだけど、漠然としているというか・・・」
そんな感覚をもつ方も多いのではなかろうか。
それはなぜか?
その理由の1つは、言葉が指す対象が多すぎるからだ。
トランジショナルケアと一口にいっても、大変多くの評価や介入がある。
主語すらたくさん変わる(医療者、患者、介護者・・・)。
ひとには、海の大きさは測れない。ただ、大きいとしか。
その中で、有効な考え方がある。
「チャンク化」された「MECE」である。
チャンク化とは、似たような情報を一括りにグループ化・塊化すること。
たとえば、白菜、ネギ、にんじん、キャベツを「野菜」として1つの塊化すること。
MECEとは、1つの大きな領域をいくつかの区分に明確に分けて、互いに重複せず、全体として漏れがないという状態。
例えば、チャーハンはご飯、グリーンピース、にんじん、卵、チャーシューからできていて、それ以外はない、という状態。
チャンク化 & MECEによって何が起こるか?
一度に対峙しなければならない情報量が圧倒的に少なくなる
マジカルナンバー7±2という考え方がある。
ひとが、一度に対峙できる情報量(ワーキングメモリ)は7±2個ほどであるらしい(Miller, 1994 >>> doi)。
僕たちは、雑然と並んだ100個には辟易としてしまう。
だが、25個ずつ梱包された、四つなら扱える。
1対4なら勝てる。
1対4を繰り返すのだ、吉岡を倒した武蔵のように。
今回の論文は、トランジショナルケアの大海を四つのチャンク構造に分けた。
4つのフォルダをつくってくれた。
今後トランジショナルケアの知識は、この4つのフォルダに収束してゆくだろう。
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