これが最新の座位バランス練習だ!!
▼ 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中後遺症の慢性期における技術支援型座位バランス療法と通常ケアの比較:パイロット無作為化比較試験
Thijs, L., Voets, E., Wiskerke, E. et al. Technology-supported sitting balance therapy versus usual care in the chronic stage after stroke: a pilot randomized controlled trial. J NeuroEngineering Rehabil 18, 120 (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景] 座りながらのバランス療法や体幹のリハビリテーションのための技術開発はほとんど行われていない。そのため、治療者と患者が一対一で集中的にトレーニングを行う必要がある。我々は、特に座位バランス療法を提供することを目的とした新しいリハビリテーションプロトタイプを開発した。本研究では、この技術を用いた座位バランス訓練が、慢性脳卒中患者において実行可能で安全であるかどうかを調査し、4週間のプログラム後に、通常のケアと比較して、臨床転帰が改善されるかどうかを判断した。
[方法] この並行群、評価者盲検、無作為化対照パイロット試験では、初発の慢性脳卒中患者を2群に分けた。実験群は、通常のケアに加えて、リハビリテーション技術を用いた追加の治療を受け、50分×12回の治療を4週間にわたって行った。対照群は通常のケアのみを受けた。全参加者に対して、介入前に2回、介入後に1回の評価を行った。実現可能性と安全性を記述的に分析した。グループ間分析では、運動および機能的アウトカムの変化の前後の差を評価した。
ボートゲーム演習のスクリーンショット:ボートゲーム(左)、参加者は体重配分によってボートを左に移動させて矢印をキャッチし、港でボートを移動させます。ボートゲーム(右)、参加者は運河の左側の土手を背にしており、体重配分によって、新たなターゲットがある右側にボートを移動させることができる
[結果] 合計で30名の参加者が募集され、29名が試験を完了した(実験群:n=14、対照群:n=15)。ベースラインでのグループ間の差はなかった。治療は参加者とセラピストによって実行可能であると評価された。座位バランス療法中の重篤な有害事象はなかった。介入前から介入後にかけての臨床結果の変化は、以下の項目で実験群が対照群よりも増加した:座位バランスおよびTrunk Impairment Scaleで評価された体幹機能(平均点(SD)7.07(1.69)対0.33(2. 35);p < 0.000);10メートル歩行テストで評価した最大歩行速度(平均歩行速度0.16(0.16)m/s対0.06(0.06)m/s;p = 0.003);Bergバランススケールで評価した機能的バランス(点数中央値(IQR)4.5(5)対0(4);p = 0.014)。
[結論] 慢性脳卒中患者を対象とした技術支援型の座位バランストレーニングは、実行可能で安全である。通常のケアに加えて4週間、12セッションのプログラムを行うことで、体幹機能、最大歩行速度、機能的バランスに有益な効果が得られた。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
視覚からのリアルタイムバイオフィードバック、エクサゲーム要素が加わっている。
個人的には後者の重要性が大きいと考えている。
伝統的な座位バランス練習(たとえば体幹立ち直りを促す左右重心移動)では、どうしてもInternal Focusとなりやすい側面がある。すなわち、「体を少し起こして」とか「両肩が水平になるように」とかである。それは、座位バランスのための座位バランス練習と言える。
しかし、実際には何かの「目的」のための「座位バランス」である。たとえば、「遠くにある醤油を取る」ための座位バランスだ。その際には、External Focusとなっていることが多い。エクサゲーム要素は、このExternal Focusでの座位バランスの自己組織化が生じやすい課題、実場面で必要とされる座位バランスの稼働様式に近い練習となることが推察される。
▶︎Related Review
>>> Internal Focus, External Focusに関する文献抄読
>>> エクサゲームに関する文献抄読