認定医の数と患者死亡率の関連性
▼ 文献情報 と 抄録和訳
虚血性および出血性脳卒中の院内死亡率に対する医師数と専門性の影響
Nishimura, Kunihiro, et al. "Impact of Physician Volume and Specialty on In-Hospital Mortality of Ischemic and Hemorrhagic Stroke." Circulation Journal (2021): CJ-20.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景] 死亡率と症例数/医師数との関連性の程度は、多くの外科手術や医学的疾患でよく知られている。しかし、脳卒中で入院した患者の死亡率と医師数との関連性はまだ不明である。本研究では、脳卒中の院内死亡率と病院ごとの医師数との相関関係を、認定資格を考慮して分析した。
[方法と結果] 本レトロスペクティブ・レジストリ・ベース・コホート研究では,2010年から2016年に虚血性脳卒中,脳内出血(ICH),くも膜下出血(SAH)で入院した患者に関する日本の全国登録からデータを入手した。また、脳卒中ケア医および関連する認定医の数も取得した。30日院内死亡率の奇数比(OR)は、一般化された混合ロジスティック回帰を用いて、施設や患者の違いを調整した上で推定した。295,150人(虚血性脳卒中)、98,657人(ICH)、36,174人(SAH)の患者から、30日以内の院内死亡率はそれぞれ4.4%、16.0%、26.6%であった。症例数と医師数には相関関係があった。すべての脳卒中タイプにおいて、脳卒中症例数と併存疾患を調整した後、脳卒中ケア医の数が多いほど、30日死亡率の低下と関連していた(すべての傾向のPは0.05未満)。
A.虚血性脳卒中,B.脳内出血,C.くも膜下出血の患者を対象に,性別,年齢,Charlsonスコア,昏睡状態の有無,併存疾患,高血圧,糖尿病,高脂血症,施設当たりの脳卒中症例数を調整した後,認定医の有無にかかわらず,医師数と30日院内死亡率との関連を示した。CIは信頼区間、ORはオッズ比。
[結論] 脳卒中治療医の数の増加は、すべての脳卒中タイプにおいて院内死亡率の低下と関連していた。ボード認定医のボリューム閾値は、専門分野と脳卒中タイプによって異なる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
日本の理学療法領域でも認定理学療法士、専門理学療法士の制度がある。
いまのところ、『So What? (だから何?)』状態、すなわちインセンティブは少ないが、理学療法領域でもこのような研究が進んでくれば、国が動いてもおかしくないと思う。
そのとき、「認定持っている人は現状からプラス」とはならず「認定持っていない人は現状からマイナス」になってしまうリスクを懸念する。そうなってしまうなら、むしろその事実が明らかにならない方がよく、探求の意欲は削がれ続ける。
それはインセンティブというより、ペナルティ強化の考え方だ。
光のところへ。―人びとが光のところへおし迫って行くのは、一層よく見るためではなく、一層よく輝くためである。
ニーチェ
人は、虫に似ている
闇でなく、光に向かう
たとえそれが、身を焦がそうとも
闇は抑止をあたえ、光は衝動を与える
『はぁ、認定を取らなきゃな・・・。』
認定をとらないことを抑止すること
『ああ、認定を取りたいな!!!』
認定をとりたいという衝動を与えること
この2つは、似て非なるものである
前者は何かを奪い、後者は何かを与えている
システムを構築するというのは、その『何か』をどうする?、という問いだろう
その手で、
強烈なパンチで殴ることもできれば、
頭をなで愛でることもできるのだ
その見えざる手を、どうつかうのですか?
ぼくは、めをまるくしてみている
P.S. この論文にはプレリリースが出ているので、参照されたい。
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