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主観的 vs. 客観的転倒リスク:4グループ分類と身体活動量の比較

▼ 文献情報 と 抄録和訳

高齢者の日常的な歩行活動と転倒の客観的および自覚的リスクとの関連性

Jansen CP, Klenk J, Nerz C, Todd C, Labudek S, Kramer-Gmeiner F, Becker C, Schwenk M. Association between everyday walking activity, objective and perceived risk of falling in older adults. Age Ageing. 2021 Sep 11;50(5):1586-1592

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 高齢者は、転倒の客観的リスク(ORF)転倒の主観的リスク(PRF)に応じて、「元気な人」(低ORF/PRF)、「不安な人」(低ORF/高PRF)、「ストイックな人」(高ORF/低PRF)、「気づいている人」(高ORF/PRF)に分類される。この4つのグループの日常的な歩行活動をセンサーで測定した結果は、まだ調査されていない。この4つのグループの日常的な歩行活動と、ORFおよびPRFとの関連を調べた。

図1

[方法] デザインはクロスセクショナル。設定は地域社会対象70歳以上のN = 294人。ORFは複数の独立した危険因子に基づいて決定し、PRFはShort Falls Efficacy Scale-Internationalに基づいて決定した。被験者はそれに応じて4つのグループに割り振られた。線形回帰法を用いて、1週間の加速度計による1日の平均歩数を従属変数として、これらのグループの関連性を定量化した。基準群として「Vigorous」を用いた。

✅ Point!! ORFの判別方法
「過去の転倒」、「バランス障害」、「歩行障害」、「多重投薬」を評価している

[結果] 4つのグループの1日あたりの平均歩数は、6,339歩(「元気な人」)、5,781歩(「不安な人」)、4,555歩(「ストイックな人」)、4,528歩(「気づいている人」)であった。「元気な人」と比較して、「ストイックな人」(-1,482;信頼区間(CI)。1,482歩、信頼区間(CI):-2,473、-491)、「気づいている人」(-1,481歩、CI:-2,504、-458)は歩数が有意に少なかったが、「不安な人」(-580歩、CI:-1,440、280)は違いがなかった

画像2

図. 「元気な人」と指定されたグループとその他の3グループとの間の線形回帰による1日あたりの平均歩数の差(95%CIを含む)。

[結論] 我々は、デジタルモビリティの結果を、ORFとPRFに基づく転倒リスク分類に統合した。この地域に住む高齢者のサンプルにおける1日あたりの歩数は、PRFではなくORFに従っていた。この分類方法が、転倒予防と同時に身体活動を促進するプログラムに参加する際に、参加者のニーズを特定するために使用できるかどうかは、介入研究で答えを出す必要がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

これは、個人的には意外な結果だった。
身体活動量に関しても『Fear avoidance model』の構図を思い描いていた。

恐怖・不安 → 身体活動量低下

こと、転倒という一事象に関して言えば、客観的転倒リスクの方が身体活動量の多寡に影響を及ぼすらしい。
ただし、全般的な客観的 vs. 主観的について調査しているわけではない。
主観的な尺度の中でも、身体活動量に影響を及ぼすものと、及ぼさないものがある、ということだろう。

それにしても、面白いのはグループ分けだ。

「元気な人」(低ORF/PRF)
「不安な人」(低ORF/高PRF)
「ストイックな人」(高ORF/低PRF)
「意識の高い人」(高ORF/PRF)

このように明確に区分されると、『あっちのグループに昇格したい』と思う心理が働く気がするし、ゲーム感覚というか、面白く感じる。
やはり、臨床現場・患者さんとのコミュニケーションにおいては、連続数よりカテゴリーが権威を持っている(カットオフ値の威力は以下サイトも参照あれ)。

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