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脳梗塞発症後、『非損傷側脳』のシナプス可塑性が高まる時期があることが判明!!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

虚血性脳卒中後のヒトの運動野における可塑性増強の窓の証拠

Hordacre, Brenton, et al. "Evidence for a window of enhanced plasticity in the human motor cortex following ischemic stroke." Neurorehabilitation and Neural Repair 35.4 (2021): 307-320.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 前臨床モデルでは、脳卒中後の早期に行動訓練を行うと、遅れて行った訓練に比べて大きな効果が得られる。この効果は、脳内のシナプス結合の再編成が増加し、広範囲に及ぶことによってもたらされると考えられている。この時期は、シナプス可塑性が高まっている自然な生物学的回復の時期であると考えられる。

[目的] 虚血性脳卒中後の数週間から数ヶ月の間に、ヒトの脳においても同様のシナプス可塑性の変化の証拠を探すこと。

[方法] 連続シータバースト刺激(cTBS)を用いて、運動野のシナプスを繰り返し活性化した。これにより、シナプス可塑性の初期段階が開始され、一時的に大脳皮質の興奮性と運動誘発電位の振幅が低下する。したがって、運動誘発電位に対するcTBSの効果が大きいほど、シナプス可塑性のレベルが高いと推測される。データは別々のコホート(オーストラリアと英国)から収集した。各コホートでは、脳卒中後の数週間から数か月間に連続して測定が行われた。31人の脳卒中患者(オーストラリア、66.6±17.8歳)の同側運動野については12ヵ月間、29人の脳卒中患者(英国、68.2±9.8歳)の対側運動野については6ヵ月間のデータが得られた。

[結果] cTBSによる皮質興奮性の抑制は、対側半球で脳卒中直後(2週間以内)に最も顕著であり、その後のセッションで減少した(P = 0.030)。cTBS反応は、同側半球で12ヵ月間のフォローアップ期間中に差がなかった(P = 0.903)。

[結論] 今回の結果は、脳卒中後のヒトの脳において、シナプス可塑性が高まる時期(発症〜2週間)があることを示す、初めての神経生理学的証拠である。この時期に行う行動トレーニングは、脳卒中後の回復に特に有効であると考えられる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

まず、シナプス可塑性をこのような手法を用いて測定できることが興味深かった。加えて、「損傷側ではなく非損傷側の脳のシナプス可塑性が高まる」というのは、どういうことだろう?急ピッチで代償動作を獲得するために可変性を有しうる脳部位が全力で活性化する、というようなイメージなのだろうか?逆に考えれば、この時期に動きまくらないことも、代償を防ぐための一戦略になりうるということか?飛躍が過ぎたが、今後の研究の発展に注視しておこう!