高強度筋収縮後の収縮特性増強は、 動作の要因検討のスクリーニングに使える?
▼ 文献情報 と 抄録和訳
最先端のレビュー:ヒトにおける筋力増強に対する脊髄および脊髄上の反応
Zero, Alexander M., and Charles L. Rice. "State-of-the-art review: spinal and supraspinal responses to muscle potentiation in humans." European Journal of Applied Physiology (2021): 1-12.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景]PAP(Post-activation potentiation)とは、自発的または電気的に刺激された短時間(10秒未満)の高強度収縮の後に、収縮特性が増強されることであり、筋肉の現象として知られている。メカニズム的な要因と、その後の随意運動のパフォーマンスへの影響についてはよく知られている。しかし、神経の活性化とPAPの関連性はあまり理解されておらず、体系的に調査されていない。
[目的]そこで、H反射と運動単位の活性化を含む、皮質脊髄路から脊髄レベルの要因までの運動経路に関するPAPの現在の理解を批判的に要約することを目的としている。
[レビュー内容]このレビューでは、PAPと神経制御の関係を統合的にまとめることで、さらなる調査のための側面を強調している。収縮履歴は、その後の収縮における神経制御に影響を与えるが(例:疲労を伴う作業)、対照的に、神経反応に関連したPAPによる急性収縮の増強はあまり研究されていない。限られた数の調査から、PAPに続いて運動単位の放電率が低下し、一貫した報告は少ないが、一般的にH反射が低下する。さらに、皮質髄質の誘発電位は低下し、皮質の無音期間は長くなる。このように、全体的に見て、PAP後には脊髄および脊髄上の反応が低下する。原因となる特定の因子とその経路は不明だが、このダウンレギュレーションは、筋収縮がより反応しているときに神経の活性化を維持するために起こる可能性があり、同時に神経筋の疲労を遅らせるために用いられる戦略でもある。実際、PAPと疲労の共存は新しい概念ではないが、PAPと神経反応の間の相互作用は理解されておらず、偶然ではない可能性が高い。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
たとえば、歩行中の足関節背屈筋の筋出力低下がフットクリアランス低下の原因であると考えた場合、歩行直前に足関節背屈筋に高強度の収縮を加えておくことでPAPを発生させ、歩行中の足関節背屈筋の動員を増加させることができる。ただし、臨床応用にはPAPがどのくらいの時間継続するのか(PAP後のダウンレギュレーションはいつ始まるのか)というtime windowの理解が必須であろう。勉強したい!