「Q-Factorを調整しますね」は、エルゴメータ調整においてドヤれそう
▼ 文献情報 と 抄録和訳
Q-factorの増加は、サイクリング中の内側コンパートメントの膝関節の接触力を増加させる
Thorsen, Tanner, et al. "Increased Q-factor increases medial compartment knee joint contact force during cycling." Journal of Biomechanics 118 (2021): 110271.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] Q-Factor(QF:ペダル間距離)が増加すると、内反膝外転モーメント(KAbM)も増加するが、このKAbMの増加が自転車競技における内側コンパートメントの膝関節接触力の増加に関連するかどうかは不明である。生体内での測定ができない場合、筋骨格のモデリングシミュレーションは、サイクリングにおける膝関節の接触力を推定するための有効な選択肢となる可能性がある。本研究では,QFの増加がエルゴメーターサイクリング時の膝関節全体(TCF)および内側(MCF)のコンパートメント接触力に及ぼす影響を調査することを第一の目的とした。副次的な目的は、KAbMと膝伸展モーメントがサイクリングにおけるMCFの正確な予測因子であるかどうかを評価することであった。
[方法] 筋骨格のシミュレーションを行い、16人の参加者がオリジナルQF(150mm)とワイドQF(276mm)で、80W、80回転/分でサイクリングをした際のTCFとMCFを推定した。QF条件の違いを検出するために、ペアサンプルt検定を使用した。
[結果] ワイドQFにおいてMCFは有意に増加したが、TCFは変化しなかった。膝伸展筋力のピーク値は、ワイドQFでは変化しなかった。膝伸展筋力のピーク値は、ワイドQFにおいて有意に低下した。回帰分析の結果、KAbMと膝伸展モーメントは、QFと一緒に考えるとMCFの変動の87.4%を説明した。
[結論] MCFの増加は、正面からのペダル反力のモーメントアームの増加に起因すると考えられる。今後の研究では、内側コンパートメントの関節への負荷が重要な場合に、QFの調整をリハビリやトレーニングの一環として実施することが期待される。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
「サドルの高さを合わせますね」は、エルゴメータ練習において当たり前と思われていることの1つだろう。これは、主に矢状面上の負荷量に影響する。
では、「Q-Factor」はどうだろう。これは、主に前額面上の負荷量に影響するパラメータである。名前がいい。「Q-Factorを調整しますね」は、かなりドヤれそうだ。ただし、通常のエルゴメータでは、Q-Factorの調整は微細にしか行えそうにない。その視点を持つということは重要なことだが・・・。