効果だけで現場への導入は決まらない! 効果+リソースを明らかにした『PRI』
▼ 文献情報 と 抄録和訳
コクランが世界保健機関と協力し、入手可能な最善のエビデンスに基づくリハビリテーション介入パッケージを確立
Negrini, Stefano, et al. "Cochrane collaborates with the World Health Organization to establish a package of rehabilitation interventions based on the best available evidence." European Journal of Physical and Rehabilitation Medicine (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[レビュー概要] 世界保健機関(WHO)とコクランは、かねてより協力関係にあります。「リハビリテーション 2030: a call for action」の一環として、WHO の Noncommunicable Diseases Department は、リハビリテーション介入パッケージ(PRI)を開発しています。PRI は、エビデンスに基づいて優先順位付けされた一連の介入と、その提供に必要なリソースを提供するものです。コクラン・リハビリテーションは、PRIの方法論開発に貢献することを求められ、特にエビデンスの選択と抽出の初期段階に関与しました。
プロジェクト全体は、6つの開発フェーズから構成されています。
- 第1段階:専門家のコンセンサスにより、負担、障害の影響、リハビリテーションの関連性、すべての医療分野をカバーすることを考慮して、20の健康状態を選定する。
- 第2段階:過去10年間に出版された最良の臨床実践ガイドライン(CPG)およびコクランシステマティックレビュー(CSR)を選択し、現在の最良のエビデンスと専門知識を抽出する。
- 第3段階および第4段階:PRIに含めるべき介入を定義するための多職種の専門家パネルによるコンセンサス(第3段階)、およびその提供に必要なリソースを定義するためのコンセンサス(第4段階)。
- 第5段階:多職種を代表する専門家パネルによる予備的なPRIの外部レビュー。
- 第6段階:PRI の普及。Cochrane Rehabilitation は、PRI の方法論開発に貢献し、特にフェーズ 1 と 2 に関与した。
このWHOとコクランの共同プロジェクトは、コクランの知識翻訳戦略に大きく貢献するものです。PIRは、WHOからすべての国に提供され、特に医療政策立案者が医療システムへのリハビリテーションを計画・実施する際に役立ちます。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
「あの、今、全身振動トレーニングが効果的と言われてまして、是非、現場に導入したいのですが・・・」
「で、いくらなの?」
このやりとりが、全世界で、どのくらいなされたことだろう。
これまで、エビデンスがやってきたことは、介入効果を明らかにすることだけであった。だが、実際に現場に導入しよう、政策として取り組もう、となったときに、もしかしたら効果より重要になってくるのが『予算・必要リソース』だ。
このトレードオフ関係によって、現場への導入が検討され、決定される。
だったら!!
「そもそも、介入効果とその介入を導入するのに必要なリソースをセットにして示せば、エビデンスの現場への導入がよりスムーズになるよね!」というのがPRIの考え方だ。さらに、消費者および一般市民、実務者、政策立案者および医療管理者、研究者および研究資金提供者という立場の全く違う4つの対象者にそれぞれリソースの提示を行っていくようで、応用もしやすそうである。PRIを活用するだけで、自動的に管理運営者の視点を盛り込んだ提案にすることができ、『こいつ、できるな』を創造していけるかもしれない。
注目は、その運営者である。
WHO+コクラン。最強+最強。ひれ伏すしかなさそうである。