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いまの85歳 30年前の85歳:「大丈夫。世界はよくなっている」を示唆する研究

▼ 文献情報 と 抄録和訳

30年間のスウェーデン人85歳の日常生活動作(ADL)と手段的日常生活動作(IADL)の障害-H70研究からの知見

Falk Erhag H, Wetterberg H, Johansson L, Rydén L, Skoog I. Activities of daily living (ADL) and instrumental activities of daily living (IADL) disability in Swedish 85-year-olds born three decades apart-findings from the H70 study. Age Ageing. 2021;50(6):2031-2037. 

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 高齢者は人口の中で最も急速に増加している層であり、障害の発生率は年齢とともに増加する。後から生まれた85歳のコホートが、早生まれのコホートと同じ障害率に直面するかどうかについては、多くの議論がある。本研究では、スウェーデンの85歳を対象に、1986-87年、2008-10年、2015-16年に生まれた3つの出生コホートにおけるADLおよびIADL障害を調査するとともに、これらの出生コホートにおけるADLおよびIADL障害に関連する潜在的な要因を調べることを目的とした。

[方法] スウェーデンのGothenburg H70 Birth Cohort研究から、1901-02年(n = 494)、1923-24年(n = 571)、1930年(n = 486)に生まれた85歳の体系的に選択された人口ベースの出生コホート(n = 1,551)を、同じ方法で調査した。障害の定義は、ADL/IADLのいずれかの活動において支援を必要とすることとした。

[結果] ADL/IADL障害は、男女ともにコホート間で減少していた(1986-87年の76.7%から、2008-10年には58.4%、2015-16年には48.4%、P値の傾向<.001)。ADL/IADL障害に関連する因子はコホート間で異なっていたが、認知症とうつ病は3つの出生コホートすべてで障害のオッズを上昇させていた。

[結論] 85歳の後期生まれのコホートは、前期生まれのコホートに比べてADL/IADL障害が少ない。障害は医療サービスに多大な経済的負担をかけるため、今回の結果は、世界の高齢化と今後の人口動態に関する課題をより肯定的にとらえることに貢献するかもしれない。しかし、後生まれのコホートでは、ADL/IADL障害の影響を受ける年齢が遅くなっても、長寿化により、機能障害を抱える後期高齢者の合計年数は変わらないという可能性もある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

この比較方法は、面白い。
時代の影響が、くっきりと浮き彫りになるようなデザインだ。
そして、この研究が明らかにしたことは「大丈夫。世界はよくなっている」だ。

人間には、ネガティブ本能がある。
簡単にいえば、「青信号は気にならない、赤信号はとても気になる」本能である。

✅ ネガティブ本能とは?
人々が「世界はどんどん悪くなっている」という思い込みから、なかなか抜け出せない原因は「ネガティブ本能」にある。ネガティブ本能とは、物事のポジティブな面よりもネガティブな面に気づきやすいという本能だ。ネガティブ本能を刺激する要因は3つある。
(1) あやふやな過去の記憶
(2) ジャーナリストや活動家による偏った報道
(3) 状況がまだ悪いときに「以前に比べたら良くなっている」と言いづらい空気
ハンス・ロスリング, FACFULLNESSより引用

課題ばかりが溢れかえり、達成が軽視される世の中だ。
「大丈夫だ、世界は少しずつ前に進んでいる」
その1つのエビデンスを確立した本研究は、干天の慈雨だ。
漸進をモニタリングしながら、進もう。

自分を肯定的に評価するためには、自分の成し遂げたことに注目することだ
デニス・ウェイトリー

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