見出し画像

『高齢者総合評価介入』の併用が入院回避型在宅医療(HAH)の道を拓く

▼ 文献情報 と 抄録和訳

高齢者総合評価介入による入院回避のための在宅入院は、高齢者の入院の代替となるか?無作為化試験の結果

Shepperd, Sasha, et al. "Is comprehensive geriatric assessment admission avoidance hospital at home an alternative to hospital admission for older persons? A randomized trial." Annals of Internal Medicine (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 高齢者総合評価(CGA)を用いた病院レベルのケアを在宅で提供することは、ベッドを備えた病院でのケアに対する需要の増加に対処するための1つのアプローチであるが、臨床効果は不確かである。

[目的] 高齢者を対象としたCGAによる入院回避型在宅医療(HAH)の臨床効果を評価すること。

[方法] デザイン→多施設共同無作為化試験。(ISRCTN登録番号:ISRCTN60477865)、設定→英国内の9つの病院および地域施設。対象者→医学的に不調で,生理的に安定しており,入院の紹介を受けた高齢者1055名。介入→2:1の無作為化により、CGAによる入院回避のHAHとCGAがある場合の入院を比較した。測定方法→主要評価項目である「自宅での生活」は6ヵ月後に測定した。副次的アウトカムは、長期入所施設への新規入所、死亡、健康状態、せん妄、患者満足度。

[結果] 参加者の平均年齢は83.3歳(SD, 7.0)であった。6ヵ月後の追跡調査では、CGA HAH群672人中528人(78.6%)に対し、病院群328人中247人(75.3%)が自宅で生活していた(相対リスク[RR]、1.05[95%CI、0.95~1.15]、P=0.36)。 36)、死亡したのは673人中114人(16.9%)対328人中58人(17.7%)(RR, 0.98 [CI, 0.65 to 1.47]; P = 0.92)、長期入所施設に入所しているのは646人中37人(5.7%)対311人中27人(8.7%)(RR, 0.58 [CI, 0.45 to 0.76]; P < 0.001)であった。

[限界] 本研究結果は、病院の短期滞在型の急性期医療評価ユニットから紹介された高齢者に最も当てはまるものであり、せん妄のエピソードが検出されなかった可能性がある。

[結論] CGAを用いた入院回避HAHは、6ヵ月後の長期入所施設への入所が減少しただけでなく、自宅で生活する高齢者の割合においても、病院への入院と同様の結果をもたらした。このようなサービスは、特定の高齢者に入院の代替手段を提供することができる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

まず、恥ずかしながら『高齢者総合評価/高齢者総合評価介入』という存在を、はじめて明確に知った。
ささっと概要を説明する。

■ 高齢者総合評価とは, 疾病の診断のみでなく, ADL, 精神心理的(痴呆とうつ状態), 介護, 居住環境などの社会状況を包括的に評価するもの
■ 日本における高齢者総合評価として、CGA7, Dr. SUPERMANなどがある
■ CGAのプロセスは、評価のみを指すことは少なく、アセスメント・治療介入まで含めた概念であることが多い
Ellisら(cochrane 2017)によれば、以下のような項目が最も一般的なCGAの構成要素であったと報告されている
  ▶︎個人に合わせた治療計画を立てる
  ▶︎多職種チームミーティングの開催
  ▶︎臨床的リーダーシップの提供
  ▶︎専門的な知識・経験・能力の保有
  ▶︎参加者および介護者の目標設定への関与

世界各国で医療費の削減や長期入院による合併症予防の観点から、極端に在院日数を短くする『ESD: Early supported discharge)』があることは知っていた。
だが、必要性があったとしても、全く入院せずハナから自宅で治療していくという『HAH: Hospital at Home』という考え方は、僕にとって新しかった。そして、CGAを併用することで、入院治療と同等の短期効果、長期効果を有することを明らかにした今回の研究は、いま、希望の光だと思う。

COVID-19は、急速にHAHの需要を高めた、というか、すでにそうせざるを得なくなっている。その中で、今回の研究結果は『CGAを併用させますので、自宅で治療することになっても入院治療と同等の効果を見込めます。病院で治療しますか、それとも自宅で治療しますか?』という選択肢を与えることを可能にさせた。

日本を変える刺激は、外から来る
黒船は、サムライを廃して、近代日本をつくった
COVID-19は、何を廃し、何をつくるのだろう?
だが、廃するのも、つくるのも、『人』である
どの道にせよ、僕たちが考え、僕たちが選択し、僕たちが、歩むのだ

さしあたり、CGAを併用したHAHの中で、理学療法士が、どのように立ち回るのか、勉強し、シミュレーションしておこう!

P.S. 雑誌内ミニレビューがあるので、そちらも参照されたい

Titchener, Karen. "Hospital at Home for Older Patients With Underlying Comorbidity." Annals of Internal Medicine (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓