入院中の高齢者に対する、予防的リハ処方の視点
▼ 文献情報 と 抄録和訳
個別の運動プログラムによる入院後の日常生活動作の低下の回復;無作為化臨床試験の二次解析
Martínez-Velilla, Nicolás, et al. "Recovery of the Decline in Activities of Daily Living After Hospitalization Through an Individualized Exercise Program: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial." The Journals of Gerontology: Series A (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景] 入院期間中、患者は機能低下を起こす可能性がある。本研究の主な目的は、各日常生活動作(ADL)の自然な軌跡を評価し、院内での運動がADLの短期的な軌跡にどのように影響するかを評価することである。
[方法] 急性期入院患者(n=297,56.5%が女性)を,入院後48時間以内に介入群と対照群(通常ケア)に無作為に割り付けた。介入群では,1日2回(朝と夜),20分程度の運動トレーニングプログラムを5~7日間連続して実施した。主要評価項目は、入院2週間前から退院までの各ADL(Barthel Indexを用いて評価)の変化とした。
[結果] 急性期の入院では、入院中のADLの機能低下が顕著であったが、運動介入ではこの傾向が逆転した(3.7ポイント、95%CI:0.5~6.8ポイント)。それぞれのADLの軌跡を分析した結果、対照群の患者はすべての活動を有意に悪化させたが、その低下の度合いは異なっていた。グループ間の分析では、入浴、着替え、身だしなみ、膀胱のコントロール、トイレの使用、移乗、移動、階段の昇降など、多くのADLで有意差が得られました(p<0.05)。対照群では、分析したすべての領域(摂食、入浴、着替え、身だしなみ、排便コントロール、膀胱コントロール、トイレ使用、移動、階段昇降)で最大の障害が見られた(p < 0.05)。
[結論] 高齢者を対象とした個別の多成分運動トレーニングプログラムは、入院中に頻繁に起こる特定のADLの低下を回復させるのに有効である。入院中の運動は、患者のプロフィールごとに個別の処方を受けるべきである。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
これまでのリハ処方:「疾患などによって適応があるからリハ」
予防的リハ処方のイメージ:「入院している高齢者、ということはこれから入院関連機能不全が生じる可能性があるから、リハ」
これは、どでかいインパクトがある。
なぜなら、これまでは疾患や障害特性に応じ、必要性に応じて処方されていたリハビリテーション(運動療法)が、たとえば『75歳以上だったら有無を言わさず処方』というデフォルト化の可能性を示唆するからだ。そうなれば、理学療法士にとって大幅な市場拡大となろう。
ただし、医療保険下において、そのビジョンを現実化するうえで重要なことは、『費用対効果』である。
デフォルト化した方が、自宅復帰率増大・再入院抑止、介護度重症化抑止などによって、リハ処方が増えることによる出費を上回る費用対効果が見込める場合には、『Go!!!』となるのかもしれない。
そして、その現実があるかないか、それは僕たち自身が丁寧に検証し、示していくことになる。
自分たちで作った舞台で、自分たちが活躍し、世に貢献したい。
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