力が骨を強くする仕組み:応力が骨配列を規定する
▼ 文献情報 と 抄録和訳
揺らぎのある流体刺激下でのプロスタグランジンE2シグナルを介した骨細胞のメカノレスポンシーによる骨芽細胞配列の制御
Matsuzaka, Tadaaki, Aira Matsugaki, and Takayoshi Nakano. "Control of osteoblast arrangement by osteocyte mechanoresponse through prostaglandin E2 signaling under oscillatory fluid flow stimuli." Biomaterials (2021): 121203.
[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar
✅ ハイライト
- 新しい骨細胞-骨芽細胞間のコミュニケーションシステムを開発した。
- 制御された流体の流れの刺激を骨細胞に与えた。
- 流れの振動刺激に対する骨細胞の反応が、骨芽細胞の配列を促進した。
- 骨芽細胞の配列は、骨細胞由来の可溶性因子によって制御されている。
- 骨細胞のプロスタグランジンE2が、骨芽細胞が作り出す骨の異方性を決定する。
[概要] コラーゲンやアパタイトの異方的な微細構造は、骨組織の機能性を決定する重要な要素である。特に、骨基質は周囲の力学的条件に応じてその異方的な微細構造を変化させる。骨における機械的伝達は、骨細胞の機能によって支配されているが、機械的刺激とコラーゲン/アパタイト微細構造の異方性形成を結びつける正確なメカニズムは、あまり理解されていない。私たちは、骨芽細胞が整列して形成する骨基質の異方性を制御する生物学的メカニズムを理解するために、新しい異方性メカノカルチャーシステムを開発した。今回開発したモデルは、異方性培養足場を用いて、力学的条件と骨芽細胞-卵細胞間のコミュニケーションを同時に制御できる、骨を模倣したコカルチャープラットフォームである。この人工共培養装置は、骨組織の異方性組織化に大きく寄与する骨細胞の機械的応答と骨芽細胞の配置の関係を理解するのに役立つ。
[本研究の重要な結果・知見] 本研究では、振動流刺激に対する骨細胞の応答が、可溶性分子の相互作用を通じて骨芽細胞の配列を制御することを明らかにした。重要なことは、プロスタグランジンE2が、骨芽細胞の配列を制御することを通じて、骨基質のコラーゲン/アパタイトの配向組織化を決定する新規の因子であることを発見したことである。
図. 振動流刺激に対する骨細胞の応答は、可溶性メディエータータンパク質を介して骨芽細胞の配列を促進した。特筆すべきは、振動流に反応した骨細胞の配列を制御するメディエーターとして、PGE2の新たな役割が初めて明らかになったことである。この結果は、PGE2が異方的なコラーゲン/アパタイト骨基質を決定する重要な標的分子であることを示している。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
「高応力部分では添加が起こり、低応力部分では吸収される」
wolffの法則
これまでは、骨合成 - 骨吸収という『量的』な尺度として、骨強度を眺めていた。
今回の研究で学んだことは、骨密度という量的な尺度だけではなく、骨細胞がどのように並んでいるかという『質的』な骨配向性という尺度があって、それが骨強度を規定する一因子であるということだ。
さらに、その骨配向性は、骨に加わる力学的な条件が規定するという。
リハビリテーションの場面では、ただ骨に荷重負荷を加えて骨合成を高めるという視点に加え、「荷重を加える方向性が骨配向性に影響を与える可能性」を考慮に入れた介入がより効果的かもしれない。
wolffの法則に、新たな一行が書き加えられた。
「高応力部分では整然とした骨配列が起こり、低応力部分では骨配列が乱れる」
なお、この論文には日本語のプレリリースが出ていてかなり分かりやすいので、参照されたい。
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