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脚長差があった場合・・・、負荷が大きいのは短い方、長い方?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

模擬的な脚長差が歩行時の足の動的パラメータに及ぼす影響-横断的な研究

Pereiro-Buceta, Héctor, et al. "The Effect of Simulated Leg-Length Discrepancy on the Dynamic Parameters of the Feet during Gait—Cross-Sectional Research." Healthcare. Vol. 9. No. 8. Multidisciplinary Digital Publishing Institute, 2021.

[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar

[背景] 脚長差(Leg-Length Discrepancy;LLD)が動的な歩行パラメータに与える影響については、広く議論されている。ポドバログラフィーとは、足裏から地面までの圧力分布の研究である。足底の圧力分布を調べることで、病態を明らかにすることができるとされている。

[目的] 本研究の目的は,健常者において,圧力プラットフォームを用いて測定した動的歩行パラメータに対する模擬LLDの影響を明らかにすることである。

[方法] 37名の健常者が観察的な横断研究に参加した。5つの異なる模擬LLD条件で各参加者の動的パラメータを捉える手順を行った。サポート時間,平均圧力,ピーク圧力の測定値は,各足とLLDレベルごとに1回につき3回の試行で登録された。繰り返し測定のための分散分析(ANOVA)検定を行い,異なるLLDシミュレーションレベル間の差異を確認した。

[結果] 短足の立脚時間には有意な変化はなかった。長脚の立脚時間は3.51%増加し(p < 0.001)、短脚の平均圧力は1.23%増加し(p = 0.005)、長脚では5.89%減少した(p < 0.001)。ピーク圧は、短下肢で2.58%(p=0.031)、長下肢で12.11%(p<0.001)低下した。

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図. LLD(20mm)を模擬した歩行時の被験者1名の足底圧曲線の一例

[結論] 本研究では、LLDが増加すると、足の荷重パターンが非対称になり、長足部の平均圧力とピーク圧力が低下し、結果的に短足部に過負荷がかかることを示した。さらに、LLDが増加すると、長足部の立脚時間が長くなる。今回の結果は、20mm以下のLLDを無視すべきではないことを示唆している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

脚長差があった場合には、以下のような患者さんとの話になることが多い。

例①:短い側が痛くなった場合
「やっぱり、高いところから落ちる距離が大きくなるので、その衝撃で痛くなるのかもしれませんね」
例②:長い側が痛くなった場合
「やっぱり、いったん低くなったところから身体を押し上げる距離が大きくなるので、その負荷で痛くなるのかもしれませんね」

どういうことか?、理論上はどちらとも正しい。だから、後出しジャンケンが可能だったのだ。
今回の実験が明らかにしたことは、「健常者においては、短い側の長軸圧が大きくなりそう」ということだ。
ただし、長軸圧であることに注意が必要だと思っている。もしかしたら、脚長が長い側においては、全体重が、長軸圧ではなく各関節の回転力(トルク)に分散されやすいのかもしれない。長い側は各関節が曲がった位置から荷重が始まりそうな感じがするので、結構あっているのではと感じる。だとすれば、たとえば膝の膝蓋大腿関節において疼痛が生じている人は足が長いとやばいとか、脛骨大腿関節の長軸圧で疼痛が出ている人は足が短いとやばいとか、更なる臨床思考過程の深化につながってゆくだろう。確かめたいことの1つだ。

脚長差がある場合の床反力+関節トルク+各関節角度(Kinematics)を調べることで、このResearch Questionを明らかにすることができる。研究種の1つとして、ストックしておこう!