実験での脳活動と生活での脳活動のギャップを埋める-MoBI-
▼ 文献情報 と 抄録和訳
脳と身体のモバイル・イメージングを脳卒中患者に普及させる時が来た
Greeley, Brian, et al. "The Time for Translation of Mobile Brain and Body Imaging to People With Stroke Is Now." Physical Therapy 101.6 (2021): pzab058.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[レビュー概要] 脳卒中患者にとって、歩行や腕の使用を回復させることは最優先事項であるが、臨床的なアウトカム指標の変化を示す介入と、現実世界での機能的能力への転換との間には大きなギャップがある。
ギャップ①:臨床医が報告する評価は、自然な動作の豊かさを反映していない可能性が高く、患者が報告する結果指標(PROM)は、脳卒中の機能レベルを不完全に示している
ギャップ②:岡本らは、健常者が本物のナイフを使ってリンゴの皮をむいたときの脳活動をfNIRSで測定したところ、同じ人がプラスチック製のナイフを使ってリンゴの皮をむいたふりをしてfMRIを行ったときには見られなかった前頭前野の活動を観察した。
モバイル・ブレイン・ボディ・イメージング(MoBI)を用いた研究は、このような知識のギャップを埋めるためのユニークな立場にある。MoBIは、臨床医が報告する結果やPROMを補完することができる、機能的な実世界の動作に関連する基礎的な神経生理学を客観的に測定するからである。このような、MoBIから得られる体の動きを説明する神経生理学的データは、どの治療的介入が実世界の活動を改善するかを特定することができる。MoBIは、少なくとも1つのニューロイメージング技術と身体行動計測からのデータを使用する実験デザインと定義される。例えば、歩行中の脳(皮質活動のパターン)と身体(眼球運動)の時間的な連携を理解するために、アイトラッキンググラスと脳波(EEG)などのモバイルニューロイメージング手法を組み合わせることができる。著者らは、この技術によって、2つの点でリハビリテーションの成果が向上すると主張している。(1) MoBIは、実世界の環境における介入の有効性を特徴づけることができる。(2) MoBIは、リハビリテーションにおけるエビデンスに基づく実践を導くことができる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
かなり難しかった。だが、重要だと感じたのは「fMRIなど実験的で限られた課題環境で明らかにされた脳活動と、実際の生活場面における脳活動には乖離があるかもしれない」という部分だ。この部分は、こと生活を科学する分野であるリハビリテーションではクリティカルな問題だろう。すなわち、このMoBI技術に優れるべき職種は、リハビリテーション職種と言えるかもしれない。