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3日間の固定化によって、骨格筋代謝はこんな感じに!

▼ 文献情報 と 抄録和訳

健康な男性において、体を動かさないでいると、わずか24時間で前腕のグルコース摂取量が大きくかつ持続的に減少するが、脂質摂取量には変化がない

Burns, Aisling M., et al. "Immobilisation induces sizeable and sustained reductions in forearm glucose uptake in just 24 h but does not change lipid uptake in healthy men." The Journal of Physiology 599.8 (2021): 2197-2210.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[キーポイント] 体を動かさないことによって生じる代謝障害の軌跡、大きさ、局所性については未解明である。同様の研究デザインで、高脂肪混合食(HFMM)を摂取した後、IMMおよび非IMM手足のFGUと前腕の脂質摂取量を測定した。24時間、48時間、72時間のIMMにより、FGUはそれぞれ38%、57%、46%減少したが、非IMM肢では変化がなかった。HFMMの後、IMMに対する同様のFGUの反応が観察され、前腕の脂質の取り込みは変化しなかった。IMMのわずか24時間後にFGUの大幅な減少が起こり、その後も持続し、IMMを受けた肢に特異的であることから、アンローディング自体が調節障害の急速な要因であると考えられる。

[背景] 筋の廃用によって生じる代謝障害の軌跡とその大きさは不明であるが、固定化に伴う代謝障害の機構的基盤を理解する上で重要である。

[方法→結果;実験A] 健康な男性10名(年齢24.9±0.6歳、体重71.9±2.6kg、BMI22.6±0.6kg/m2)を対象に、腕を固定する前(0)、24時間後、48時間後、72時間後、および固定していない対側の腕で180分間の経口グルコースチャレンジを行った際の前腕のグルコース取り込み量を測定した(試験A)。FGUは、固定24時間後(38%、P = 0.04)、48時間後(57%、P = 0.01)、72時間後(46%、P = 0.06)にベースラインから減少し、72時間後には固定していない肢よりも63%減少した(P = 0.002)。

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図は、ベースライン(0)、24時間後、48時間後、72時間後の前腕のグルコース摂取量と、ベースラインと72時間後の対側の非固定肢のグルコース摂取量の曲線下面積を示している。データは平均値±SDおよび各ボランティアの個別の値で示した。前腕のグルコース摂取量は、固定前は両腕間で差がなく(P = 0.58)、NIM肢では72時間後も変化がなかった(P = 0.16)。しかし、IMM肢では、固定後24時間(38%、P = 0.04)、48時間(57%、P = 0.01)、72時間(46%、P = 0.06)で、前腕のグルコース摂取量がベースラインから減少した。また、前腕のグルコース摂取量は、IMMアームがNIMアームに比べて、固定72時間後に減少した(P = 0.002)。

[方法→結果;実験B] 2つ目の研究では、9人の健康な男性(年齢22.4±1.3歳、体重71.4±2.8kg、BMI22.6±0.8kg/m2)を対象に、腕を固定する前(0)、24時間後、48時間後、および72時間後に、対側の固定していない腕で420分間の混合食チャレンジを行った際のFGUと前腕の脂質摂取量を測定した(研究B)。FGUの反応は試験Aと同様であり、前腕の脂質摂取量は試験期間中、両腕とも固定化前と変わらなかった。ブドウ糖投与によるFGUの低下は、固定化後24時間以内に起こり、固定化された肢に特有の持続的なものであった。脂質の供給量を増加させても、これらの反応の速度や大きさ、脂質の取り込みには追加的な影響はなかった。

[結論] これらの結果は、筋収縮の欠如が、FGUに即効性のある生理的障害をもたらすことを示している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

目には見えない骨格筋代謝が、固定化によってこんな感じになっていることがイメージできた。
ということは・・・、と考えてみる。固定後、いきなりアクセル全開で筋トレすると、血中栄養が充足していたとしても、筋内に取り込むことができない状態が起こりうる。なお、この研究は健常者を対象としていることに注意が必要だ。これが例えば、そもそも代謝系に障害が生じている糖尿病患者などであったら・・・、ポジティブではないことは明らかだ。
するとどうなるか?→結局、異化(骨格筋内に骨格筋再構築のための栄養が供給されずに糖新生)が起こってしまう!
徐々に負荷を上げていった方が良さそうだが、その程度は、どうだ?
・・・分からない。
この研究の次のステップとして、「じゃ、固定解除後、さまざまな負荷を与えた時の骨格筋代謝や同化・異化関係はどうなる?、また期間との関係は?」があるだろう。
Burns et al.さん、おねしゃす!

P.S. 雑誌内論文解説があるので、そちらも参照されたい。
Linder, Braxton A., Alex M. Barnett, and McKenna A. Tharpe. "Move it or lose it: Limb immobilisation results in impaired postprandial skeletal muscle glucose uptake." The Journal of Physiology (2021).
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar