ハンドへルドダイナモメーター:アナログをデジタルに変える落とし穴
▼ 文献情報 と 抄録和訳
筋力評価のためのハンドヘルドダイナモメーター:落とし穴、誤解、そして事実
Garcia MAC, Fonseca DS, Souza VH. Handheld dynamometers for muscle strength assessment: pitfalls, misconceptions, and facts. Braz J Phys Ther. 2021 May-Jun;25(3):231-232.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[レビュー内容] 筋機能の臨床評価は、様々な神経筋骨格系疾患に罹患した患者の診断と治療に役立つ重要な臨床情報を提供する。臨床の場では、筋力出力はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用いて測定できる。しかし、HHDで得られた測定値は、一般的に誤った表現および/または誤った解釈をされている(Garcia, 2020 >> doi.)。
▶︎ 罠①:HHD測定値を直接筋力として報告してしまう
- HHDで測定した生の力の値を筋力として報告することは、誤解を招く。
- 筋出力を正確に報告するためには、HHDに加えられた力に、四肢に抵抗を加えるために使用されるレバーアームの長さを掛け、以下の式で決定されるトルクまたは力のモーメントとして表現される必要がある。
- レバーアームは各個人の体格によって異なるため、特定の解剖学的指標(例えば、外側踝の上)を使用する場合でも、関節の回転中心とHHDの位置との間の距離を測定することが重要である。
- 残念ながら、多くの出版物は、これらの重要な方法論的問題を考慮することなく、強度データを報告している。
▶︎ 罠②:測定角度を考慮せず、HHD測定値を一様のものとして報告してしまう
- HHDで測定した筋機能を解釈する際には、トルクと角度の関係を理解することが必要。
- ある関節でトルクを発生させる能力は、長さと張力の関係、および参加するすべての筋のモーメントアームに基づいている。
- したがって、ある関節で測定された筋力出力(トルク)は、測定が行われる関節角度に決定的に依存する。
- HHDを用いた筋力データの報告や解釈は、その測定が行われた関節角度を知った上で行う必要がある。
▶︎ 罠③:体重で標準化された値を報告していない
- 筋力評価に関連するもう一つの側面として、体重によって発生するトルクを考慮することがある。
● Reference note ↓↓↓、標準化の必要性やメリットについて記載されている。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
両足底をつかないようにして、膝関節は70度屈曲位で・・・、etc。
詳細な測定方法が求められ、HHDを用いた論文を投稿すれば、「その測定方法は統制されていたのですか?、この部分は・・・」とか。
なんでこんな細かいこと言われるんだ。
いいじゃん、数値として測れているんだから。
憲兵気質かよ、風紀委員かよ!
とか思っていた、過去の自分・・・、目を覚ませ。
確かに、デジタルは便利だ。便利すぎる。
すごくスマートで、コンパクト。
アナログでは難しい、被験者間を束ねた解析を可能にさせる。
火ではなく、電気だ。馬車ではなく、車だ。
だが、便利で速力が大きいほど、
事故が起きたときに、それを重大なものにする。
少なくも、臨床研究者を肩書くつもりならば、
その無機的な数値をダブルクリックしたときに、根差す数式がすぐにあらわになるほどには、仕組みを理解しておけ。
それを理解する過程の中で、方法の厳密さがいかに大切か、骨の髄に沁みるだろう。
方法に厳密な人は、小うるさい憲兵気質、風紀委員、ではない!
アナログをデジタルにする危険性を、真実を、重みを、知っている人だ。
この瞬間から、僕も、そうなる。
なぎ倒しなぎ倒しても、止まらないハードラーのように、
都度・都度、自分のブラックボックスを壊しながら進もう。
労力コストを恐れず、未知との遭遇を無視せず、もっと掘れ、掘れ。
確かに、スピードは鈍化するかもしれない。
だが、そこに言い訳を求めるな。生長の源泉はそこにこそある!
『オソイホドハヤイ』
この言葉を、心の底の底から信奉しよう。
僕たちが知っているのは、ただ一つだ
その代わり、確かに知っている
トルストイ
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