1つ芽ぁのものがたり
【 真新しい靴 】
ウィンドウショッピングを眺めていたら
古びた広告が貼られていました
【 この真新しい靴を履いてください 】
乱筆で描かれているモジが待っていました
“ えぇ?あたし・・?? ”
自分の瞳に確認するも戸惑ってしまいましたが
足元にはちょこんっと2つの靴が並べられています
“ 今 履いているんだけど ”
クタクタでも愛着のある靴が大スキなのです
“ ごめんねぁ ”
小さくお辞儀をすると動けなくなって瞳の真下にある
真新しい靴がちょこんっと待ってくれているのでした
“ 待たれても困ります ”
正直に自分の気持ちを伝えさせて頂きましたが
真新しい靴はじぃーっと待っていて
【 この真新しい靴を履いてください 】
そんな風にじわじわっと伝わってくるのです
“ ムズカシイなぁ ”
この事態をどう乗り越えてゆけば良いかと思案を
試みるのですがなかなか難しい問題となりました
“ 履いたら良いんですよねぁ ”
この真新しい靴を履いた場合に履き心地は良いのか?
様々な漠然とした愚問が浮かんでくるのです
すると風に揺られながら真新しい靴の中に
小さな紙が舞い落ちてきました
【 選ぶコトは捨てるコトである 】
【 決断 】とのタイトルで描かれているのです
“ えぇ? 決断しなくちゃいけないの? ”
大ゴトになりそうな気配を感じたのでキャンセルを
申し出しましたが真新しい靴はじぃーっと待っていて
【 この真新しい靴を履いてください 】
そんな様子でじわじわと伝わってくるのです
“ 決断はできません ”
正直に自分の気持ちを伝えさせて頂きました
すると青い鳥が真新しい靴の中に
小さな紙を舞い落してゆきます
【 小さな決断ができなければ
大きな決断はできないのである 】
【 選択 】とのタイトルで描かれていました
“ 今キャンセルしましたょ・・ ”
あらためてキャンセルを伝えさせて頂きましたが
真新しい靴はじぃーっと待っているのです
“ 困ったなぁ ”
しかめっ面で考えてみても困惑は消えません
すると黄色の小鳥が真新しい靴の中に
小さな紙を舞い落してゆきます
【 勇気のない人には決断ができない 】
【 慎重 】とのタイトルで描かれているのです
“ 余計なお世話なんですケド・・ ”
なんだかムッとしてしましました
すると木の葉の葉っぱの葉ッパ紙が
真新しい靴の中に舞い落ちてゆきました
【 決断をするコトは責任を持つコト 】
【 自分 】とのタイトルで描かれているのです
“ 解ってます ”
履きますわぁ!履けば良いんでしょっと
半ば強引に真新しい靴を履こうとしたんのですが
真新しい靴は悲しげにじぃーっと眺めながら
【 この真新しい靴を履いてください 】
感情で乗り越えないでっとじわじわと伝わってきます
“ ごめんねぁ ”
ひと呼吸をしながら伝えさせて頂きました
“ 真新しい靴に出会えたのも
御縁ですので履かせて頂きますねぁ ”
不思議と素直な気持ちで履くコトを決めていました
いざ履いてみるも違和感もないけれど全く
新鮮さもないままの履いた感じとなりました
“ 履きましたケド・・ ”
それはそれでリアクションに戸惑うも斬新な感想が
本当に浮かんでこないので困ってしまいました
するとぴょこんなカエルが瞳の前にと飛び込んできて
小さな紙をぺたぁっと貼り置いてゆきます
【 自分で決断した人生にこそ価値がある 】
【 自然 】とのタイトルで描かれているのです
真新しい靴を履くコトで
煌びやかな人生が始まるのではないのだから
何の感動もないコトが当たり前である
真新しい靴を履きながら自分に馴染むように日々の工夫と
鍛錬を重ねて真新しい靴が自分の靴になった時にはじめて
感動を観じるコトを味わえるのであると
感動とは
モノゴトに深く感銘を受けて強く心を動かせるコト
この言葉は
【 この真新しい靴を履いてください 】
ウィンドウに貼っていた古びた広告がハガレ落ちていった
裏の面に乱筆なモジで描かれていたのです
“ 今が 真新しい靴に履き替えて歩いてゆく
時機なのですねぁ ”
愛着のあった靴にお別れの挨拶をしながらも真新しい靴に
履きかえると新たな気持ちで第1歩の勇気で歩いてゆける
決断が出来るようになっていました
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