儲かって仕方がない特殊な人材ビジネスと、日本の現実
知人が、人材紹介業を経営している。
人材紹介業者も飽和しきった昨今において、業績は上向き、儲かって仕方がないと言う。
どんなハイクラス転職なのか知人に尋ねると、その真逆だと言う。
生活困窮者を紹介していると言う。
どう言うカラクリ?
日本は、世界に比べて貧困の差はない方だと表向きには言われているが、「貯蓄もなく、手持ちが千円以下になってしまった」人や、「スマホも持てなくて」「アパートも追い出されて」「ネットカフェにも泊まれない」など切羽詰まった人たちが、知人曰くワンサカと湧き出るほど居るらしい。
その人たちは、生活保護の申請には行かないのかと知人に訊くと、申請に行くのが面倒に感じ、日延している内に、手持ちがなくなってしまうらしい。
中には夫婦揃って、何か仕事くださいと面接に来る事もあるらしい。
なおカップルや夫婦の場合、切羽詰まって選り好みできない状況下であるにも関わらず、二人同じ職場でないと嫌だとか、割と要望が強いらしい。
「今日泊まる場所もお金もない」人たちばかり、もちろん車もないので、知人が(法人が)取り急ぎ移動費を立て替えて、知人の元へ移動して貰う。
法人で古いアパートを借り上げ、仮住まいできる。
食べるものは、これで一日やり繰りするようにと、知人が毎朝千円札を一人一人に手渡しする。
その人たちが、最初に買いに行くのがタバコだそう。
実に9割以上の彼らが、もれなく喫煙者。
金なし家なしスマホなしなのに!!
総じて依存体質な面が見受けられるらしい。
最初の面接が終わると彼らは「タバコいいすか」と願い出ると言う。
あぁ、タバコを1本わけてくれと?
違う、タバコ(ポイ捨てされたシケモク)を探しに外をウロついて来ると言う。
あくまで人材紹介なので、直近の仕事は何故辞めたのか等を知人は一応尋ねるも、みな口を揃えて「自分は悪くない、悪いのは先輩だった」「上司の言い方が悪かった」全て他人のせいで、こうなったらしい。
ここまで何かと振り切ってしまっている人たちなので、仕事は選べない。でも、稼げる仕事がちゃんと用意されている。特殊な技能は要らない、大手の製造工場での仕事だ。
特に男性なら、3か月でも腰を据えて働けば、行きたい場所へ移動して、そこで一人暮らしをするぐらいは十分貯められる。
なのに、3か月も続けられる人などかなり稀で、早ければ3日で、1週間で、彼らはトんでしまう。
それでも知人に(法人に)紹介料が入って来る。
知人が立て替えたぶんを差し引いても、何なら返済せずに彼らがドロンしても、儲かって仕方ないらしい。
そんな振り切った人たちを、受け入れてくれる工場が全国にある事にも驚愕する。
それだけ人手が足りていない、それに尽きるとの事。
あの製品もこの製品も、振り切った彼らの労働力を寄せ集めて、完成している。
こう言う実情って、メディアがもっと取り上げて報道すれば、社会への問題提起になるのではと知人に伝えたら、こないだ某放送局が取材に来たと言っていた。
日本は、やれこの仕事は底辺だとかカースト最下位だとか揶揄するが、もっともっと振り切ってしまった人たちが実際に居る。
私たちは、みな自分の事で精一杯だ。この人たちに比べて自分はマシだとかそんな話ではなく、日本がここまで困窮してしまっている現実をもっと知って欲しい。
そしてその現実は、他人事ではないという事。
自己責任論や、自分さえ生活できれば良いと言う考えもそろそろ改めて、日本が良くなるには何からするのが良いのか、自分に何ができるか、ちょっと本気で考えたい。