2023-08-13T18:14-メダイ

 部屋を掃除していたら、このようなものが見つかりました(図1)。色々と検索してみたところ、「メダイ」と称されるもののようです。似た形状のものがネットにもありました(図2)。文献によれば、「キリスト教を受容していったキリシタンたちには、心の拠り所としているものがあった。そのひとつがメダイ(メダリオン)であり、キリスト教に関係する図像を鋳込んだメダイにはキリスト教への強い想いが込められ国産化されるほどになった。これはまさに信仰の証そのものだった。」[安高 啓明 編キリシタン考古学の世界―今日に甦る祈りとさけび―,西南学院大学博物館,6(2012),http://www.seinan-gu.ac.jp/museum/publish/#publish]とある通り、信仰の証として身に着けるものだそうです。
 私の部屋で見つかったものは、特段古いものではありません。2023_07_29,1905の記事でも触れましたが、私は亡祖父の意向で洗礼名だけを持っており、入信はしてません。自分でメダイを買った覚えもありません。祖父の遺骨は、カトリックの教会に併設された納骨堂にあります。なので、家族の誰かが納骨堂に寄った帰りに、教会の横にある売店で買ってきてくれたものと思われます。

図1 自室で見つかったもの
図2 Labarum(ラバルム)様ウェブページより(https://labarum.ocnk.net/product/1127

 見つけた当初は、特に気になるところはありませんでしたが、よく見てみると、「LOURDES」という文字が鋳込まれていることに気付きました。興味本位で調べてみると、日本語では一般に「ルルド」と読み、フランス南西部にあるカトリックの聖地とのことです(https://kotobank.jp/frjaword/Lourdes)。この地では、聖母が出現したという旨の非常に有名な故事があるそうで、私は全く知りませんでした。ウィキペディアでは「ルルドの聖母」という項目で、時系列順に解説されています。このような宗教的体験に係るものは、懐疑的なものとして受け止められることが多いと思われますが、話としては非常に面白いと感じました。幸い、ウィキペディアに和文の参考文献がありました。「ルルドの聖母」で一番の盛り上がりをみせる場面について下記に抜粋しました。

「群れと,またある意味ではペイラマルの期待のなかで,受胎告知の祝日(3. 25. )に初めて『私は無原罪の宿りです』Que soy era Immaculada Councepciou とのメッセージが得られる。これは四年前(1854)にピウスIXによって宣言された教義と符合する言葉だった。」[関 一敏:19 世紀フランス聖母出現考 : ルルドとポンマン,民族學研究,48,251-274(1983),https://www.jstage.jst.go.jp/article/minkennewseries/48/3/48_KJ00003548568/_article/-char/ja/;文献中の用語:群れ,不定型な民衆レベルの集合体]

「※ 16回目(3月25日(木)):その日は丁度,『受胎告知』の祝日に当たっていたのであるが,今日こそはと食い下がるベルナデットに対して出現者はようやく口を開いた,『私は無原罪の宿りです』と。教理問答など学ぶ機会も無かったベルナデットは出現者のメッセージの意味を理解できないまま,聞いた通りをペイラマル司祭に伝える。教会側の代表としてずっと慎重な態度を崩さずに来たペイラマル司祭であったがさすがにそれを聞いて驚き,出現者が聖母マリアであるとの確信を得るに至る。」[岩渕 邦子:「マリアの時代」のユイスマンス,愛知教育大学研究報告(人文・社会科学編),54,53-61(2005),http://hdl.handle.net/10424/537

 どうやら、教育を受ける機会が無かった少女が、知るはずもない言葉を司祭の前で喋った、ということが話の要点だと思われます。無理やりカタカタにすると「ケ・ソイ・エラ・インマクラダ・カウンセプシウ」という発音になるそうです(https://www.pauline.or.jp/chripedia/mame_Lourdes.php)。また、事が起こった日付と、係る教義に通ずる言葉であったことも、宗教的に意義深いものとして捉えられた要因と考えられます。なお調べた限りでは、西暦の数字や曜日自体には、特別な意味はなさそうでした(1858年3月25日木曜日)。
 木曜日の3月25日生まれの人は、何となく縁を感じられそうな話になりそうです。国立天文台のウェブページによれば、「28年の途中にも4回 (平年3回、うるう年1回) 曜日が同じになる年がありますが、うるう年の入り方によって何年後になるかはまちまちです。28年後なら、同月同日は必ず同じ曜日になります。」(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/A5E6A5EAA5A6A5B9CEF1.html#:~:text=28%E5%B9%B4%E3%81%AE%E9%80%94%E4%B8%AD%E3%81%AB,%E5%90%8C%E3%81%98%E6%9B%9C%E6%97%A5%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)とのことです。具体的に何年の何月何日になるのかは、カシオ計算機株式会社(CASIO)が管理運営しているウェブサイトのページから計算することができます(https://keisan.casio.jp/exec/system/1545966073)。

 キーホルダーの部品のようなものを偶々見つけたところから、鋳込まれた意味を調べ始めて、いつのまにやら数時間が経っていました。人々が持つ祈りが、実体を持った表象として今もここにあることを思うと、感慨深いものがあります。祖父は、祈りとは何かを考えて欲しかったが故に、私に洗礼名を託したのではないかと、何となく思った次第です。