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五感で巡る、秋の散歩
紅葉の季節が訪れ、普段の散歩道が、まるで画家のパレットをこぼしたかのように鮮やかに染まっている。赤、黄、橙、そして葉に宿る微かな緑。それぞれの色がひとつひとつ、まるで語りかけてくるかのように、風景の中に佇む。
ひと葉、またひと葉。近づいてみると、同じ赤の中にも濃淡があり、太陽に透かされると、光が内側からそっと息づくように輝きを増していく。黄色い葉は、まるで陽の光そのものが凝縮されたかのように黄金色に燃え、オレンジ色の葉は温もりを含み、心までそっと包み込んでくれるようだ。
色彩のグラデーションは、その場に立ち尽くす私に、季節の移ろいと自然の美しさをそっと教えてくれる。歩みを進めるたび、光と影が織り成す新たな表情が目の前に現れ、心の奥底がふわりと和む。秋の風景は、ただそこにあるだけで、いつもとは違う何かを感じさせてくれる。
足元に目を向けると、色とりどりの落ち葉が重なり合い、カサカサと積もっている。その上を歩くと響く、「カサカサ」「ザクザク」という軽やかな音。乾いた葉は、踏みしめるたびに軽やかに応えてくれる。少し湿った葉の上では、「サクサク」と柔らかい響きが耳に届き、足の裏から秋が語りかけてくるかのようだ。
落ち葉の音は、どこか懐かしさを感じさせる秋の音色。思わず子どもの頃に戻ったような気持ちで、楽しみながらその上を歩く。ふかふかとした感触、ザラっとした乾いた葉の質感。足裏で感じるこのひとときが、心の隅々に染み込み、日常の疲れをふっと解きほぐしてくれる。
秋は、目に、耳に、そして足元に触れるだけで心を豊かにしてくれる季節。何気ない散歩であっても、ふと立ち止まってこの「秋の色」や「秋の音」に身を任せてみると、心の奥にある感覚がそっと目覚めるのがわかる。小さな気づきが連なっていくたびに、心が、そして感性が新たな色彩で彩られていく。
毎日が少しだけ新鮮に、そして少しだけ優しく感じられる──秋の散歩は、そうした小さな喜び宝庫である。