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◎脇役列伝・番外:暁星塵と宋嵐ー1

(画像は「魔道祖師 完結編」キャラクターPV第3弾【宋嵐】より
 ぼけた画像しかなくて申し訳ないが、左・暁星塵シャオシンチェン、右・宋嵐ソンランだ。)

 彼らの話は、他のエピソードに比べて妙にくっきりしているように感じる。私には劇中劇が始まったように感じられた。「魏無羨と藍忘機が幸せになれなかった世界線」の話だと、作者・墨香銅臭が語っていたのをどこかで見た記憶がある。
 ◎脇役列伝その1:藍思追(4ー5)で、義城編に出てくるまでの二人の話を少ししたが、ここで改めて全体の物語を振り返ってみよう。

 暁星塵は抱山散人ほうざんさんじん(魏無羨の母の師)の弟子だったが、十二年前、十七歳の時に下山する。当時は射日の征戦(温氏討伐戦)から数年、乱葬崗殲滅戦から間もない頃で、暁星塵も世を救いたい思いで山を下りた。
 下山して初めての夜狩で、払子ほっすと長剣一本を手に一人きりで山に乗り込み、一番手で獲物を仕留めたことで名をあげ、多数の仙門から声がかかったが、全て断り、親友の宋嵐と一緒に血縁に寄らない仙門を作ることを目指していた。
 当時の人々は彼らを讃えて、「明月清風めいげつせいふう(澄んだ瞳と清らかな風のような高潔さを持つ)の暁星塵、傲雪凌霜ごうせつりょうそう(厳しい冬の寒さにも屈しない強靭な精神を持つ)の宋子琛ソンズーチェン」と呼んだ。

 そんな中、櫟陽常れきようチャン氏が滅ぼされる事件が起こる。固く閉ざされた屋敷の門の中で、十数人の血族と五十数人の家僕が恐怖のあまり死んだとされる事件だ。
 宗主・常萍チャンピンは数名の家族と共に夜狩に出かけており、半月ほど経った頃、道中で一族の凶報を受け慌てて戻ったが、誰かが故意に屋敷の防御陣を破り、残虐な悪霊を大量に中に引き入れたということ以外何もわからなかった。

 この事件の解決に動いたのが暁星塵で、調査に乗り出して一か月後、彼は犯人を突き止めた。幼い頃に常萍の父親といざこざがあったという、まだ少年だった薛洋シュエヤンだ。
 暁星塵が薛洋を捕えた時、ちょうど蘭陵金氏が金鱗台で大規模な清談会を開いており、彼はそこへ薛洋を連行してすべての証拠を提出し、厳重に処罰するよう要求した。
 ほとんどの世家に異存はなかったが、薛洋が半欠けの「陰虎符」から残りの半分を作り出す力を持っていたことで、蘭陵金氏が彼を庇い、聶明玦ニエミンジュエと百家の前で始末すると約束したにも関わらず、勝手に処罰を終身刑に変えて地下牢に閉じ込めた。
 そればかりか、常萍に圧力をかけ「常家の事件は、薛洋と一切関係がない」という公言までさせて、ついに薛洋を解放した。その頃には聶明玦も乱心して命を落としていたので、誰もそれを止めることができなかった。

 結局、事件の数年後には常萍も剣で凌遅りょうちされて殺された。生きた人間の体から肉を少しずつ、全部で三千六百回も削いて、最後には骨しか残らないという残酷な死だった。櫟陽常氏はこうしてすべて滅んだ。

 捕えられたことを恨みに思っていた薛洋は、暁星塵ではなく宋嵐に目をつけ、常家の時と同じ手口で、宋嵐が幼い頃から修行していた寺院・白雪観はくせつかんを跡形もなく滅ぼし、策を弄して、宋嵐の両目を毒の粉で失明させた。
 暁星塵は師匠の元を離れて山を下りる時、二度と戻らないとの誓いを立てていたが、宋嵐が失明し重傷まで負ったことで、誓いを破って宋嵐を背負い抱山散人の元へ戻った。自らの両目をくり抜き、自分のせいで宋嵐が失ったものを返したことで、宋嵐の目は光を取り戻したが、暁星塵は盲目となり、そのまま山を下りて姿をくらました。
 以来、宋嵐は暁星塵を探して旅を続けていたのだが……。

 ここからは、魏無羨が盲目の少女の幽霊・阿箐アージンと共情して知った話になる。長くなってきたので、次項に譲ろう。

(◎脇役列伝・番外:暁星塵と宋嵐ー2に続く)

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かんちゃ
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