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「孝行娘、男となる(孝女化男)」
ずっと以前に書店で見かけて以来、ずっと探していたのだが見つけられず、とうとうAmazonで注文してしまった本が今日届いた。
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『中国妖怪・鬼神図譜』という本で、なかなか面白かったので一本紹介しよう。「孝行娘、男となる(孝女化男)」という話だ。(選りに選ってこの話を選ぶ辺りに、我ながら偏りを感じる。)
建平県(遼寧省)の農家の夫婦は、ともに六十になろうとしていたが、十七歳の娘がいるだけだった。
父が病気になったので、娘が臂の肉を切って薬に混ぜて飲ませると、父は良くなったが、「お前は孝行娘じゃが、生憎女なので、家を継がすわけにはいかん。跡継ぎがいなくちゃ、あの世でひもじい目にあわなくちゃならんなぁ」と嘆いた。
その夜、娘が「どうぞ、跡継ぎをお恵み下さい」と天に祈ると、白髪の老婆が、四寸ほどのイモと、橘の実二個を、布団の中に入れる夢を見た。目が覚めて下半身を触ると、モッコリしている。立派な男になっていたのだ。その後、彼(?)は妻を娶って二人の息子が出来た。
これは「吃人[きつじん:人肉嗜食(カニバリズム)]」という項目にある話で、話中の「臂の肉を切って薬に混ぜて飲ませる」という部分がそれに当たるのだが、ご覧のとおりこれは親孝行の話で、グロテスクなところは無い。
私は他にも、栄養を取らせるために自分の腹を切って肝を食べさせた、という話を聞いたことがあるが、中国では人を食べることへの禁忌意識が低く、特に医療のための食人肉は、孝行な子女が両親や舅姑のために、自らの股を割いたり肝を割いたりして孝行を行う「割股行孝[かっここうこう]」が盛んに行われた時期があったという。
それにしても、イモと橘の実とは。四寸が妙にリアルで困惑する。
<参考>
『中国妖怪・鬼神図譜 清末の絵入雑誌「点石斎画報」で読む庶民の信仰と俗習』
著者:相田洋[そうだ ひろし] 発行:集広舎 2015年
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