★1 花轎と折鶴
とまれアニメ1話冒頭、プロローグ部分から。
事件の発端である嫁入道中のシーン。花嫁が乗っているのは花轎と呼ばれる輿である。新郎側が輿を出して、新婦を迎えにいく。新郎自身は家にいて新婦を迎え入れ、その後新郎の家で結婚式を挙げる。
このような輿自体は春秋戦国時代からあったが、これを人々が花嫁の出迎えに使うようになったのは、宋のあたりかららしい。本体の大部分は赤色で、華やかな装飾がなされ、めでたさと縁起のよさを表しているという。
通常四人で担ぐと聞いたことがあるが、この場面の花轎の周りにはもっと沢山の人が見える。途中で担ぎ手を交代させることもあるようなので、その交代要員かもしれない。無論警備の者もいることだろう。
迎えは夜明け頃と聞いているのだが(当日何軒か花嫁を迎える家が重なった場合、早く到着した家ほど円満で幸福になると言われた地域があったらしい)、この場面はどう見ても夜のようだ。到着する頃に夜明けを迎えるということか。或いは昔の日本のように、夜に結婚式を行う地域もあったのだろうか。この場面だけでは何とも言えない。
現代では、花轎の代わりに乗用車が使われているらしい。沢山の花やリボンで飾り付けた赤もしくは黒塗りの車を何台も連ねて、新郎が新婦の家へ直接出向くようだ。ベンツやロールスロイスをレンタルすることもあるとか。爆竹を鳴らすなど、大層派手なお出迎えであるようだ。
もっとも、そうした昔ながらの風習を嫌う向きもあるようで、純白のウエディングドレスに身を包み、ギリシャ風の白い教会で式を挙げたい、と望む若者もいるとか。ちゃんと結婚式用にそんな教会があるらしい。
私としては、あの赤い民族衣装がとても好ましく思われるのだが、まあ人の考えはそれぞれだ。中国でそんな結婚式があり得る事自体、時代は変わっているのだと、つい感心してしまう。
さて。話は変わって、折鶴である。花嫁が襲われたシーンで、血に染まった折鶴が出てくる。
実はこの折鶴がどうしてここにあるのか、私にはどうしてもわからなかった。状況的に、元から花嫁と共に輿の中にあった物と思うのだが。
中国でも鶴は長寿の象徴であり、鳳凰に次いで高貴な鳥とされている。日本に千羽鶴があるように、中国にも「千纸鹤」というものがあり、長寿や病平癒、大きな願い事を叶えるための願掛けの一種ともなっているらしい。だとすれば、おそらく花嫁自身か或いは誰かに託されて、「無事花婿の元へ辿り着けますように」という願いの込められた物だったのかもしれない。
夫婦が円満で末長く続きますようにということで、日本でも白無垢の刺繍に鶴を入れることは多い。披露宴のテーブルの名前でも「鶴」はよく見かけるし、少なくとも日本では、結婚と鶴は強く結び付けられたイメージだ。その辺りも何か関係があるのだろうか。
ところで、よく外国人が日本の折鶴を見て感心したなどという話を見聞きして、折紙文化は日本独自のものだ、と思っている人がいるかもしれないが、先に話した様に中国にも折鶴はあるし、韓国にもある。紙を折って何かを作るという行為自体は、紙がある所になら何処にでもある。極端な話、封筒や紙袋でも紙を折って作っている。
ただ、昔、紙が貴重だった欧州などでは、折って何かを作るというより、そこへ絵を描くということの方が優先されてしまったらしい。それでも一部民族には、伝統的な折紙文化を持っている者達がいると聞く。
中国の折紙は、調べてみると結構面白い。カラフルな絵柄の紙(日本の千代紙のようなもの)で作るチャイナドレスなどは、ネットでよく紹介されているので、興味のある人は覗いてみるといいだろう。