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◎脇役列伝その1:藍思追(6ー4)
(◎脇役列伝その1:藍思追(6ー3)の続き)
霊力を失い、乱葬崗頂上にある洞窟・伏魔洞に逃げ込んだ修士たち。
霊力喪失の原因が秣陵蘇氏の宗主・蘇渉にあるとわかった時、蘇渉はそれまで彼らを守っていた陣を破壊し、一人伝送符で逃亡する。
外にいた凶屍の群れが伏魔洞内になだれ込んできたが、まともに戦えるのは藍忘機と温寧のみ。
魏無羨は、彼の剣・随便を自在に操るには入っている身体(莫玄羽)の修為(重ねた修行の成果。また、その段階)が足りず、またその凶屍たちは陰虎符によって誰かに呼び出されたものなので、彼の思いどおりに動かすことができない。持っている呪符と素手が頼りという状態だ。
残りは経験不足の少年たちと、霊力を失った修士たちだけ。
温寧は凶屍を一列素手で撥ね飛ばしたが、一人の力で屍の群れを防ぐことはできなかった。
「鬼将軍! 私たちも手伝います!」
藍思追、藍景儀も剣を抜いて前に出た。長く休んで体力の回復した藍啓仁は、自ら姑蘇藍氏の剣を修める修士たち一行を率いて、猛烈な勢いで剣を振るう。
思追もまた風の如く剣を捌いていると、ふいに後ろから金属音が一回聞こえ、誰かが自分を庇って背後の一撃を防いでくれたことがわかった。振り返った思追は、その人物を見て驚いて問いかける。
「金公子、なぜあなたも来たんですか?」
金凌は、同世代の者たちが皆凶屍たちに向かっていくのを見て我慢ができなくなったようだ。欧陽子真もまた突っ込んできた。
全力で戦っている少年たちに感化され、多くの者が剣を抜き、残り少ない霊力と体力をつぎ込んで戦闘に加わった結果、ついに形成は逆転し、半時辰が過ぎた頃には凶屍の数はまばらになっていた。
藍忘機が最後の一体を二段に斬り離した時、多くの者は既に地面に倒れ込んで起き上がることすらできず、数名の宗主たちと体力旺盛な少年たちだけが、まだ辛うじて剣を地面について支えにしながら立っている。
「終わったん……ですかね……」
声の主は、先ほどの猛烈な戦いの中で死んでいなかったどころか、話し声も大きく元気のある聶懐柔だ。
歓喜の声が上がる中、藍啓仁は数回血を吐き出し、あぐらを組んで呼吸を整え始める。彼に代わって藍忘機が指示を出し、
「一時休憩したら、死傷者の確認、怪我人の救助、長引かせてはならない」
門弟たちは声を揃えて「はい!」と答えた。
しかし、彼らが行動するより前に、魏無羨が急に張り詰めた声を発する。
「静かに」
静寂の中、伏魔洞の外から響いてきたのは、枯れ枝と落ち葉を踏みつぶす足音だった。
新たな一波の凶屍の群れだ。しかも、先ほどの一波よりもさらに膨大な数がいる!
(◎脇役列伝その1:藍思追(6ー5)へ続く)
今回は少し短いけれど、ここで「第十九章 丹心<一>」が終わりなので、一旦切ることにする。
次回は「丹心<二>」。いよいよあの場面がやってくる。
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