映画ドラえもんのび太の地球交響曲をみた話
久々に映画館に映画を見に行った。ドラえもんのび太の地球交響曲。藤子・
F・不二雄生誕90周年記念作品とのことで見に行く気満々で公開を待っていた。
主題歌「タイムパラドックス」への思い入れ
見に行く気満々なのは、主題歌をVaundyが担当しているから。この主題歌がまた素晴らしくて歌詞をじっくり聞いていると涙が出てくる。
実はこの曲がリリースされた時、私は石川のある方と交流していた。この方はVaundyを共に推す仲間。ちょうど私の娘ぐらいの年齢の若くてかわいらしい推し友さんだ。2024年1月1日の石川能登半島の震災で家屋が被害を受け避難生活を余儀なくされてた。
その前から少し交流のあった彼女だが、災害があってから頻繁にやり取りしていた。寒い真冬に避難所で毎日つらい思いをしていると思うと、いてもたってもいられなくて、少しでも気休めになれば、と思い毎日メッセージのやり取りをしていた。
そんな時この映画ドラえもんの主題歌をVaundyが担当するということがわかり、2024年2月28日にCDが発売となるのに先駆けてこの曲は1月7日にYouTubeで配信された。
この曲を初めて聞いた際の印象は優しくてあったかくて、純粋に人を思う気持ちが伝わる愛にあふれた曲だということ。まるでわが子を思う親の気持ちそのものだ。ドラえもんがのび太を思う気持ちはきっとそういう親の気持ちに重ねることができる。いろんな厳しい現実があっても、未来が明るい笑顔であふれることをひたすら祈るリリックとなっている。
私がこの曲を初めて聞いたこの時に思い浮かべたのは、石川の推し友さんのことだった。今どうしてるかな、寒くないかな、不安だろうなと思いながらやり取りしていたかわいいお友達のことを思い、涙があふれて止まらなかった。
石川の推し友さんにこの曲の歌詞をメッセージし、ネットの向こう側とこちら側で二人で泣いた。そんな特別な体験をしたのだった。
Vaundyはこの曲について映画の公式HPで以下のようにコメントしている。
Vaundyの思いを知り、さらにこの曲を映画館で聞きたい、という一心で3月の公開を待ちに待って映画館に足を運んだのだった。
映画の率直な感想
さて、映画館には夫を伴って行った。お供は別に誰でもよかったし、なんなら一人でもよかったのだが、まぁ夫を連れて行った。よく考えたら夫と二人で映画を見たのは何十年ぶりだっただろう。夫はドラえもんと聞いてあまり乗り気ではなかったが、私の強い希望に負けてしぶしぶついてきた。
なぜか50代の夫婦連れが映画館に。ドラえもんを見に来た熟年カップルはもちろん他にはおらず、小さな子ども連れや小学生、中学生に交じってドラえもんを見た。
ネタばれになるのでストーリーについて言及は避けておくが、50歳でドラえもんを見るということは、想定外にすごく新鮮だった。なぜならここまでいろんな子どもに触れあってきた経験や、子育ての経験もふまえつつ、新たに獲得した視点や子ども観で見るからだ。
例えば
ジャイアンのすぐ手が出る癖はなんとかしたほうがいい。
小学5年生のわりにはジャイアンはデカすぎる。
のび太は思っていたよりずっと自己主張できている。
しずかちゃんは困ったときには「ドラちゃん…」と言う。
などなど。50歳でドラえもんを見るのは、とても面白かった。驚きやツッコミどころがたくさんあって、目が離せない。でも小学5年生と言われるとなんだか納得してしまう。
一番思ったことは、ドラえもんに出てくる子どもたちは、難しいことは抜きにしてとても子どもらしい姿をしているということ。
複雑な社会や自然環境の変化、親の過干渉、過剰な期待、スポ少や習いごとなどの過密スケジュールに左右されず、好きなように、あるいはイヤなものはイヤで生きている。屈折した姿はひとつもなくて、本当に子どもらしいのびのびとした姿が描かれており、子どもって本来こういうものだと思い出させてくれる。
ジャイアンが衝動的なのもスネ夫がお調子者なのも、のび太がぼんやりしているのも至って子どもらしいと思う。それでいいのだ。
最後エンドロールで主題歌「タイムパラドックス」が流れた時にはやっぱり涙が止まらなかった。この主題歌は映画ドラえもん のび太の地球交響曲のストーリーを要約し、ドラえもんの世界観を表現している。作品と一体化しているのだ。
素朴で優しい気持ちや純粋に人を思うあったかい気持ちを感じる歌詞であり、曲であり、そしてドラえもんはそういうアニメなのだ。子どもの素朴さやのびのびした姿、それぞれ個性的で、みんな受け入れられ、愛されている。現代社会において真に幸せな子どもの姿が減りつつある中で、貴重で素敵な世界観だ。
映画デートの顛末は
ちなみに夫はエンディングで席を立ってしまった。トイレに行きたいと言って。私にとっては最大の見どころ。夫にはもう終わっていらないシーン。
30年近くも一緒にいるとさすがにそのズレは承知しているし、別になんとも思わない。若いころの映画デートならそうはいかないだろう。もしかして「こんな人とは結婚できない」と思っていたかもしれない。今となっては腹も立たず、むしろ一人で泣けたので全然かまわなかった。
あとで夫に「ドラえもんの映画のどこかに感動した?」と聞かれた。つまりドラえもんは子ども対象映画なので、なんで大人の私が見に行きたかったのか、どこが良かったのかということを聞きたいのだ。
主題歌をVaundyが担当していることも知らぬまま、夫は、なぜ妻がドラえもんの映画を子どもに交じって見たいのか、不思議なままついてきたのだった。
私は素知らぬ顔をして「やっぱエンディングよね」「エンドロールに秘密があったね」と答えると「へー、そうだったの?席を立って失敗したなぁ」と驚いていたのが結構面白かった。
映画ドラえもん のび太の地球交響曲は熟年夫婦の滑稽な映画デートの思い出となった。そんな茶番にもVaundyの「タイムパラドックス」はあったかく寄り添ってくれるのだ。