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後悔しないように

引っ越した先では、初めての土地、初めてのお母さん達の中で全く慣れず孤独でした。手話のことも忘れ日々の生活を送るのに精一杯でした。

そんな生活にも少しずつ慣れてきた頃、突然私の前に現れたのが、子どものクラスメイトのお母さんでした。手話で自己紹介をする姿を間近で見て衝撃を受けました。

そう以前、家で「東京」「飛行機」とお風呂で手話の練習をしていたものですから、手話を使うチャンスが訪れたのですが、なかなか自分から声をかけられるものではありませんでした。「〇〇の母です」と手話の練習をして声をかけようと思いましたが勇気が出ず、次も日もやはり声をかけることは出来ませんでした。興味本位で嫌な思いをさせないか、自分が手話で話せるようになりたいだけで声をかけてもいいのか、そんな葛藤がありました。しかしその時に思ったのは、「ここで声をかけることができなければ私はきっと後悔する」と。私は勇気を振り絞り、彼女の肩に「トントン」と手をかけました。その「トントン」が今の私の生活に繋がっています。
              つづく

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