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「野菜の絵」と食べ物の「グループ分け」

 幼児教育の現場で「食育」と言うと、最近までこの「ひとりごと」でも連載していた「偏食の突破」が大きなウェートを占めているように思います。他にも、自分たちで野菜などを栽培して食べるとか、子供が先生やお家の人と一緒に簡単なクッキングをして食べるとか。「うちの園ではこんな『食育』やっています!」と紹介されるのは概ねこのような内容です。
 とは言え、「食育」の分野は意外に広いのです。例えば、箸の持ち方や、食事中のマナーを指導していくことも立派な「食育」ですが、あまりに毎日のこと過ぎて、生活として浸透し過ぎていて、「あー言われてみればそれも『食育』ですね」と、先生たち自身気付いていないこともあります(ただここに教師が気付いているかどうかは結構重要で、その指導が「躾」的なものか「教育」的なものか分かれるポイントとなります。この辺りのお話はまた今度)。
 で、今回紹介する事柄は「食育」の中でもちょっと珍しい取組です。単純に知識を広げる・深める取組なので、それを「楽しい」と感じられる5歳児を対象に行っています。

野菜の絵

 私が5歳児を担任するとき、教室にはたくさんの野菜の絵が掲示されます。

メジャーなものからマイナーなものまで、多種多様な野菜が掲示されています。

 これは、子供たちの弁当に入っていた野菜を絵に描いて貼り出しているのです。

 よく尋ねられるのですが、この絵はつとむ先生が描いています(笑)!少々拙いのはご愛嬌、子供たちに「弁当の中にはいろんな野菜が入っているんだよ」ということを知ってもらいたくて行っています。
 この取組を続けていると、「卵焼きは野菜じゃないと?」、「海苔も野菜なん!」といった驚きの声が子供たちから聞かれたり、調理される前の姿を知って盛り上がったりしています。
 また、どんな野菜か分かったり、友達を同じ野菜が入っていて共有感があったりすると、苦手な野菜でも食べる子がいます(こんなところにも「偏食突破」効果が!)。そして、まだ貼られていない新しい野菜の絵を貼ってもらおうと、お家の方も巻き込んでいろいろな野菜を弁当に入れてくるなど、「食」に対して積極的な姿が見られるようになります。

 果物は対象外だけど海藻は野菜。コンニャクはコンニャクイモ、オキュウトはエゴノリまで遡って野菜として紹介など、一定の独自ルールのもとで行っていますが、年度末には掲示された野菜の種類が70種類を超えることもあります( ゚Д゚)
 子供たちにもどんどん浸透し、「先生、ゴマって野菜?」、「ゆかりご飯の紫のやつも野菜?」と気付いたり(どちらも野菜です)、「○○ちゃんが新しい野菜持って来たって!」と教えてくれたり。自分が口にする物に対しての興味や関心がどんどん深まっていきます。
 ソウメンカボチャやアピオス、ロマネスコやクウシンサイなど、私も見たことも食べたこともない新しい野菜が登場することもあり(食べないと貼ってもらえないのでちゃんと食べる子供たち)、絵のコレクションは年々増えていっています(笑)。

食べ物のグループ分け

 冒頭、「ちょっと珍しい取組」なんて書いていましたが、こちらの取組は、最近いろいろな園で取組の事例が増えてきているようです。

それぞれのグループをさらに2つに分け、6分類として学ぶのは中学生になってからのようです。

 子供たちにクイズ形式で、「赤の食べ物(血や肉、骨になる)」、「黄の食べ物(エネルギーになる)」、「緑の食べ物(病気になりにくくなる)」の3つのグループに食べ物を分類してもらいます(もっと細かい分類もありますが、幼児教育の段階ではこれで十分です)。そのまま上記の説明をしても伝わりにくいので、車を例に挙げて、筋肉→エンジン、エネルギー→ガソリン、病気→故障と置き換えると、幼児でも理解していきます。

 最初のうちは、「リンゴが赤(のグループの食べ物)で、バナナは黄色!」などと見た目で回答する子供たちですが、そうではなくて、食べたときの効果で分類されているということを丁寧に伝えていくと、だんだん理解していきます。中には、「チーズ」→「牛乳からできとうけん、赤!」、「うどん」→「小麦粉からできとうけん、黄色!」などと、原料にさかのぼって推察する子も現れるようになります。
 大切なのはそこからで、1回の食事で3色全ての食べ物(や飲み物)を口にすることが望ましい、ということです。それを知ると子供たち、弁当の中の3色を探し始めます。朝食の3色をわざわざ報告してくれる子もいます(笑)。そして子供たち気付きます。「(週に2回の)パン給食の日って赤(牛乳やハム等)と黄色(パン)しか食べてないやん!?」。
 ・・・お家の方にとっては少々小うるさい存在になるかもしれませんが、簡単な果物や野菜を入れてもらえると3色揃います、とお伝えしているところです。


 2つの取組みを紹介しました。
 「知識を広げる・深める取組」と前置きしましたが、大切なことは、子供たちに知識を紹介するだけに止めないということです。紹介したからには、実際の食事の中でどうなっているだろう?と体験に結び付けることが重要です。幼児にとって、知識と体験が結び付くと、それは学びや経験となって成長につながります。こと食育に関しては、保護者の協力が必要な部分もあります。子供たちの姿や園での取組を紹介しながら、園でも家庭でも食育を行っていけることが理想的です。

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