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基本的な生活習慣の習得と山本五十六

 法的には「学校」である幼稚園が小学校と大きく違うことの1つに、「(教育活動だけでなく)生活の中で子供たちが学び、育つ部分が大きい」、ということが挙げられます。
 多くの子が、初めて親元を離れ、教師や友達と一緒に集団生活を送ることになります。そこでは、着替えたり片付けたり、食事をしたり排泄をしたりといったことを自分で(或いは自分たちで)行っていくことになります。
 あれ?それって「自発的な活動」のこと?、とピーンと来た方。「ひとりごと」を読み込んでいただいてありがとうございます。

まさにその通り。なので「生活」に関する部分も幼児教育なのです。

 自分で(自分たちで)生活を送っていくためには、基本的な生活習慣を習得しなければなりません。
 発達段階を考慮すると、4歳児(年中児)では概ね下記の内容を習得していくことになります。

★着替えに関するスキル★
○衣服を着脱する ○裏返しになった服や袖を戻す ○衣服をたたむ ○靴を履く(脱ぐ) ○ファスナーを開ける(閉める) ○ボタンを留める(外す) ○(名札などの)安全ピンを付ける(外す)
★食事に関するスキル★
○弁当箱の蓋を開ける(閉める) ○水筒からお茶を注ぐ ○箸を使って食べる ○食事中に席を立たない ○箸を持たない方の手で器を持つ ○テーブルとの距離を縮めて座り、こぼさないように食べる ○食べ物や飲み物をこぼしたときは拾う・拭く ○ゼリーなどの蓋を開ける
★掃除に関するスキル★
○雑巾や布巾を絞る ○雑巾や布巾を使って拭く ○箒で掃く ○ちりとりでごみを集める ○雑巾や布巾を洗う
★排泄に関するスキル★
○トイレで排泄をする(間に合う) ○〔男児〕ズボンやパンツを全部降ろさず、立って小便をする ○お尻を拭く
★その他のスキル★
○石けんで出を洗う(蛇口をひねる) ○うがいをする ○時間を意識する ○挨拶をする ○自分で薬を飲む

 園にせよ家庭にせよ、これまではともすれば先生や保護者がやってくれていた上記のようなスキルを、子供たちは発達段階に応じて習得し、自分で行わなければならないときがやってきます。
 ただ、これらのスキルは自然に身に付くものではありません。誰かに教えてもらい、本人が繰り返し練習することで習得していくものです。とは言え、「自分でやってみて?」でいきなりできる子はよほど器用な少数派でしょう。で、つとむ先生的おすすめ指導テクニックが、(タイトルにもなっている)山本五十六が残した名言なのです。

「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」

山本五十六

企業の人材育成などでよく見掛ける言葉ですが、実はこれ、幼児にもぴったりあてはまります。

「やってみせ」

 これはそのまま、①先生や保護者など誰かが見本となってしてみせることです。幼児は視覚から大変多くの情報を得ているので、真似するだけでできるようになることもあります。また、友達や年長児など、年齢的に近い誰かが見本になると、「じゃあ自分もできるかも」とハードルが下がったり、張り合ううちにできたりすることもあります。

「言って聞かせて」

 幼児に対してここは少し多いのですが、②有用性(なぜそれをするのか)を示し③やり方を教え④時には手伝ったり一緒に行ったりすることです。
 特に大事なのは②です。自分の身の回りのことを幼児が自分から行うようにするためには、有用性を示す必要があります。
 例えば、脱いだ服を裏返して元に戻すのは、先生に注意されるから戻すのではなくて、次に自分が着るときに着やすいように元に戻すんですよね?
 どのスキルにも有用性がありますので、それを分かりやすく子供たちに伝えると、子供たち納得してどんどん自分でやるようになります。
↓(納得からの主体性についてはこちらも参照)

 で、やる気満々になってきた子供たちには、③④でときには手伝いつつ正しいやり方を教えていきます。

「させてみて」

 ⑤本人に繰り返しさせることです。ただ、特にスキルが身に付いていないうちは、ここに多くの時間を要します。時間に余裕がないと、つい大人は④ばかりを行ってしまい、本人が行う機会を奪ってしまいます。それではなかなかスキルが身に付きません。時間が掛かってもいいので、失敗してもいいので、どんどん子供たち自身にさせていきます。

「ほめてやらねば」

 ⑥褒めるですが、実はこれが1番忘れてしまいがち。できたときは大袈裟に狂喜してベタ褒めしましょう!
 私が担任するクラスでは“わっしょい”というシステムがあり、それまでできなかったことができるようになると「わ~っしょい!」とつとむ先生に数回“高い高い”をしてもらえます(笑)。他にも、クラス全員の前で紹介したり、やってみてもらったりして(それが他の幼児にとっての①になりますね)褒めまくります。小さなことでも、そのような積み重ねが次のスキル習得への挑戦意欲に強く結び付いていきます。

「人は動かじ」

 ただ、幼児について言えば、このようにして習得したスキルも、ときに気分が乗らなかったり、何だかうまくいかなかったりして、できないときもあります。特に、習得したばかりのときはよく見られます。そのようなときは、時間を掛けて見守ったり、できたときのことを一緒に思い出したり、たまには手伝ったりすることもありなんじゃないかと思います。

 基本的な生活習慣の習得については、家庭との連携が不可欠です。園で「こんなことやってますよ」、「できましたよ」を保護者に伝えていくことで、家庭でも挑戦したり、本人が自分で行うようなったりします。お家の人に褒められたり、できた喜びを共感してもらったりすると、子供たちもとっても嬉しくなりますね\(^o^)/

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