「古都」にて 20221123午後
二条城を出た私たちは、妻が行きたいというパン屋に出かけた。
フラップアップというパン屋らしい。それを昼食がわりに、するわけではないらしい。
ただ、雨が一瞬ひどくなって休みたかった私たちは、二条城の前、と言っても大きな道路を挟んで向かい側の、「兎珈琲店」という店に入った。横がけ2人テーブルが5〜6ほどの、サッと飲めるサードウェーブな感じの店で、和の内装がおしゃれで、奥にアパレルも売っていた。トイレは綺麗で、静かな空間だった。
さすがに寒くてホットコーヒーを頼む。焙煎強めだが、苦味の中にコクのある旨味系のコーヒーで、出来たクレマを程よく啜りながら、こういう生活をしてみたかったなんだよな、と思いながら、子どもの面倒を見た。子どもらはオレンジジュースで、静かにしていた。さすが小学生。
検索すると、運営は109ブランドのアパレル会社らしい。この俺がここで109と邂逅するとは。東急さんとは色々あってもよかったのに、なかったことが悔やまれる。まあ、それはこっちの話。なるほどね、だから、〇〇〇〇…とは、言わないでおこう。私はカフェ全般の味方でありたい。
さて、そんな静かな空間で過ごしていたら、雨も止んで、フラップアップを目指して歩いた。いや、京都も広いよね、と思った。地下鉄一駅を舐めてた。ここらはおしゃれな町家が多いなあと思いつつ、飲食店は全部予約でいっぱいと貼り紙がしてある。ほう!
パン屋にたどり着くと、割と混んでる。小さいので、我々子どもと私は外で待っていたのだが、学生、旅行者、近所の人がそこそこ買いに来る。なるほど、人気店かと理解した。買った後、大通りに出てタクシーを拾い、銀閣へ行く。
子どもに見せるのは銀閣、金閣どっちがいいかと思ったけど、金閣はこれから必ずどこかで行く機会があるだろうということで、銀閣にした。タクシーのオッさんに行き先を告げたら「シルバーの方ね」とこともなげに行っていた。そうそうシルバー。
参道入口で下ろしてもらい、出口付近の昭和な食堂でうどんや定食を食べた。客層も昭和だった。見ると昭和2年創業。客も女将も昭和だった。つっても、女将は俺よりちょっと上くらいだろう。それなら昭和つってもアレだべさ、と思った。でも、「……中核派……」みたいなワードが聞こえてきたりして、なにを話しているんだと思ったけど、ここは昭和の異空間ならふさわしいと思いながら、楽しんだ。
参道は、完全に平成後期ないしは令和だった。なぜすみっこ暮らしの専門店があるのかわからなかったが下の子はそこでグッズを買っていた。カフェ、スイーツ、土産屋、昭和は木刀とか提灯を売ってる店だけだった。中高生はなぜか木刀買うよね。観光地の参道ウォッチは、心躍るが、最近、なぜか必ずハチミツが売ってるよね。銀閣参道にもマヌカハニーというのぼりが出ていて、試食販売していた。
銀閣に着いた。
あ、そうか慈照寺っていうんだっけか。結構坂上で、やっぱり盆地を一望できる場所に建てたいよね、と義政に共感した。諏訪大社もそうなんだけど、上から盆地が一望できると、なんか心が沸き立つよね、と、心なしか上の子も楽しんでいるようだった。
これ、江戸時代に作られたんだってね。終わらないね銀閣。見立ては見立てなんだろうけど、これはモダンだよね。銀閣、モダンです。桂離宮もモダンなんだから、江戸にはモダンが始まっていたんだろうね。なんちゃって。そう考えると、奈良、鎌倉をもっとちゃんと見ないとダメだなって話になって、鎌倉に行きたくなる。
紅葉はきっちりいい感じで色とりどりだった。雨のせいで青が観覧者のジャケットだけだけど、晴れれば水面に青も映って色とりどりになるね。山の上までみんないかれてたけど、子ども連れの疲労困憊な我々は地上をグルリで、外に出ます。あとは写真で。
渋いです銀閣。
色んな角度から見て映えポイントを探せっての、もう昔からやってたってことだよね。写真はないけど、心の中で、この眺めがいいねってなもんで。
いや、銀閣よかったね。紅葉の時期だからなのかな?でも四季の写真を見るとやっぱり、四季折々で違う表情を見せるので、愛されてる理由はそれなのかもしれないな。上の子も、思ったより、銀閣は良かった!と言っている。下の子は、すみっこ暮らしが買えて満足らしい。
人もたくさんいたけど、でも、雨だからそこまででもなかったね。2度、3度行って変化を楽しみたいものですね。子どもはなぜか比叡山に行きたいと言ってたけど。父は桂離宮に行きたいです。
それですぐに降りてきて、タクシー乗り場にたくさん並んでいたからサクッと乗って京都駅まで。3000円ちょい。まあ高いけど、時間と体力を一人750円で買ったと思えば。1時間くらい早く新幹線に乗れたしね。
帰りは、551蓬莱の豚まんだのなんだのを買い込み、帰路に着いた。関東には店舗がないんだよね。
なんか、結局スタディもそこそこに見物客になっちゃったけど、建物だけがやっぱり見どころじゃなくて、空間造形全体が見どころだよね。すでに参道から勝負は始まっているということですね。
帰りの新幹線は、ウトウトしていたら、すでに新横浜。速いよね、のぞみ。
結局、川端康成の『古都』の舞台は回る余裕も時間もなかった弾丸京都だったけど、思ったより子どもたちの心に痕跡を残せたようで、お大尽な金の使い方だったけど、まあいいかな。
でも、一番記憶に残ったのは、二段ベッドに寝たことだったそうだ。