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「ローマ人の物語Ⅷ 危機と克服」(塩野七生著、新潮社)/ユリウス・クラウディウス朝の後の混乱とその収拾 ヴェスパシアヌスから賢帝の時代へ
ユリウス・クラウディウス朝から脱皮とともに訪れた危機
帝政を実質導入したカエサル、それを見事に受け継ぎ帝政によるパックスロマーナを実現したアウグストウス、その義子のティベリウス、さらにカエサル、アウグストウスの血をひく者たちによる帝政の継続、、、、その末代のネロによる混乱、そのあとに訪れた更なる混乱から危機が迫る、第八巻はこんな状況から始まります。
状況の見えていない短期三代の皇帝
ガルバ、オトー、ヴィテリウスと短期三代の皇帝は、ローマ帝国のおかれた状況、皇帝の求められる役割が見えていない凡庸な人間だったために、ローマに混乱を招き、危機に陥れます。
ムキアヌスの知恵とヴェスパシアヌスの良識がローマを救う
その危機を克服したのは、シリア総督だったムキアヌスと当時エジプト、ユダヤで軍司令官のヴェスパシアヌスでした。
こういうコンビはローマ帝国の歴史で露わに出てきたのは、これがはじめてなのではないかと思いますが、参謀と将帥の関係で天下泰平を齎す知性と凡庸の組み合わせ、こういう場合、もちろん将帥であり皇帝にもなるヴェスパシアヌスの方に筆が多く取られるのはやむを得ないにしても、ムキアヌスの方に私はかなり興味をそそられました。
しかもムキアヌスはヴェスパシアヌスより年が下だったのです。
そのあたりのことは、塩野さんは詳しく書かれていないのだけれど、この八巻を読んでなお余韻として残っています。
ムキアヌスがあまりにもあっさりと身を引くという態度によっても興味をそそられます。
ヴェスパシアヌスからティトス、ドミティアヌスそして賢帝ネルヴァへ
ヴェスパシアヌスは治世が10年ありましたので、自分の息子たちへの道筋を作って死ぬことができました。
しかし、ローマは多端で有り、いかにそういう息子たちと言えども簡単には治まりません。
よくやった方だと言うことが塩野さんの筆でわかりますが、次の繁栄のためには五賢帝の時代を待たなければならないのでしょう。
歴史の面白み
歴史の面白みは、このように一見行ったり来たりを繰り返すように見えて、歴史は韻をふむと言われるプロセスを経ながら進んでいくというところにあります。
日本の歴史もしかりで、おそらくローマに学んだ現代アメリカの歴史もそうであるかもしれません。
次巻「賢帝の世紀」が楽しみです。