英語で仕事をするということ:会議でしゃべるためのちょっとしたコツ

幸か不幸か、40年の会社人生の大半を外資系企業で過ごしてきたので、英語は仕事をする際のマストアイテムです。スマホやパソコンと同じ位置づけ。「できるできない」じゃなくて「使わないと物理的に仕事ができない」。

そんな環境で長年やってきてここ数年感じているのが(職種によるとは思いますが)、ビジネスにおける英語の「読み・書き・しゃべり」の優先度が確実に変わったということです。
いままでは、まず「読み書き」、その次に「しゃべり」の順番だったものが、ここ数年のAIの進化により、「読み書き」のハードルがぐんと下がりました。

日本語は複雑な言語なのでAI翻訳の精度にいまだ難点はあるものの(でも日進月歩で良くなってきてますが)、メールのやりとりやチャットメッセージも今は即時に自動翻訳されますし、ウェブ会議も字幕表示が可能です。

実際、英語がほとんどできない弊社のひとたちも、これらのツールを使ってふつうに外人と仕事のやりとりをしています。というか昨今は、ITや人事のオペレーション部門が日本国内から海外へどんどんアウトソーシングされちゃって、パソコンのトラブルでヘルプデスクに電話したら出てきた人が海外のひと、とか、ウェブサイトの修正を依頼したら英語でチャットが来た、なんてことが当たり前になっちゃってますよねえ。

このように読み書きのハードルがぐんと下がった結果、最後に残ったのが「しゃべり」です。そして困ったことにこれ日本人はもっとも苦手。
日本の教育にケチをつけるつもりはありませんが、「手を挙げて指されるまで静かに待とう」とか、「よく考えてから発言しよう」とか、学校教育のやりかた、さらには根っこにある日本人の単一民族からくる控えめな国民性みたいなものも影響しているような気はしています。

でもそこを掘り下げるのが今回の趣旨ではないので、ここからは、ずっと英語をツールとして使ってきた私自身の経験をふまえて、特にしゃべりが大きくものを言う「英語会議の場でのちょっとした心構えとかコツ」を少しお伝えできれば、と思います。



なんでもいいから会議中に1回は発言しましょう
日本人のメンタリティ的には「くだらないこと言うくらいなら黙ってる方がまし」となりがちですが、往々にして(大人数だったり非常に重要な議題をディスカッションする場合を除いて)外人との会議においては、くだらない発言でも沈黙よりましです。沈黙はその場に参加していないのと同じ。会議が終わったときあなたはいなかった存在です。できるだけ事前にコメントまたは質問を考えておいて会議に臨みましょう。

自己紹介とジョークを用意しておきましょう
外人との会議は、冒頭に「アイスブレイク」として自己紹介の時間を設けたり、最初に場を和ませる軽いやりとりがあってから本題に入ることが多いです(今は日本人同士の会議でもここ大事と言われてますから、私が思うよりは普通になっているかもですね)。
日本人からすると「自己紹介なんてこっぱずかしい」「ジョークをわざわざ用意するのかよ」って感じかもですが、これも仕事のひとつと割り切って用意しておくのがおススメです。1回用意しておけば案外使いまわしできますし。


英語で話すときは2割増しでテンションあげていきましょう
そもそも言語的に、英語の方が口を大きく開けて抑揚をつけないとうまくしゃべれません。さらに外人の多くは陽キャラか否かを問わずテンション高めなので、日本人がふつーに臨むとしょっぱなから圧力で負けちゃいます。相撲の立ち合いみたいなもんです(やったことないけど)。なので、特に初対面の外人と対面で話すときは、2割増しテンションを自らに憑依させて、「なりきり外人の演技」をするイメージでのぞむことをおススメします。


声は低めに、を注意しましょう
これは特に、私自身の痛い教訓をふまえて女性のみなさんに向けたご注意です。女性は、テンションをあげると時として妙に(かん)高い声になりがちですが、「高い声=子供っぽい=インテリジェンスに欠ける」とみなされ、ビジネスの場においては逆効果であることが多いです。「このひと(英語はあんまりうまくないけど)頭がよさそうなことを言ってるっぽい」イメージを相手に植え付けるためには、声は意識して低め、これポイント。



以上です。つまりは ①前もって準備する、②演技力をつける、これにつきます

最初は「我ながらクサい演技だ」と思ったとしても、繰り返していくうちにだんだんそれが「地」になっていくので心配ご無用。これら、海外在住経験がない私自身が40年近くやってきて実際に効果があったものばかりで、手間もそんなにかからないので、よろしければぜひお試しいただければと思います。

ここまで読んでいただいて、「なんだよ表面的なことばっかりじゃないか」と思われた方へ。

日本人って、内容はちゃんとしているのにちょっとしたスキルで負けてるよ、と思うことがよくあるんですよ。「せっかくいい意見や考えをもっているのに、発言しないがために無視されて、結果、日本人は何考えてるのかわからんとか勝手にやるとか陰口叩かれて、ちゃんと貢献しているのに本国から注目してもらえない」みたいなことをいままで数多く傍で見て、悔しい思いをたくさんしてきました。

せっかくいいこと考えてるんだから、表面的でくだらないぜとバカにせずにちょっとした準備と演技力を身につけて、日本人のプレゼンスをしっかり示していこうじゃないか。これが私の切なる思いです。

あと最後に一言。
今回は「しゃべり」にフォーカスしましたが、もっとも大事なのは当たり前ながら「しゃべる中身」で、ここを鍛えるためには日本語の「読み書き」がマストだと思っています。読み書きはいわば脳の筋トレ。ここなくしてペラペラしゃべる表面的なスキルだけ身につけてもすぐにメッキははがれます。

ということで、「読み=読書」の重要性については、また別の機会に考察してみたいと思います。ではまた。



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