ステラおばさんじゃねーよっ‼️④羽はあるが、飛べない夢
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️ ③夢のなかでは は、こちら。
🍪 超・救急車
とある晩の、カイワレの夢。
当然、覚えてはいない夢だったが。
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だだっ広いリビングに大の字で寝転んでいた。
大理石の床の上は冷たく、壁は見当たらない。
なぜか窓だけが、切り取られたように浮かんでいる。
いつの間に窓から入り込んできた風は、やさしく頬を撫でた。
ふと目を開けると、ふわふわでさらりとした肌触りのものにくるまっていた。
実際は、白髭を紡いだようなテクスチャで、心地良かった。
ふと背中に目を移すとそれは身体からニョキリと、ナチュラルに生えていた。
羽、かあ。
羽、だなあ。
羽、なんだなあ。
羽が生えた自分の背中に不感症的反応を見せてみたが、やっぱり羽は、わが意思で反応した。
どうやら、動くみたいだ。
今この背中にある羽は、何を意味するのだろう。
羽を伸ばしたり、羽を広げたり、羽を休めたりしろ!という、神からの啓示かなにか、か?
とにかくどこまでも真っ白な、か細い糸から織りなる羽は、こうやって今の状況に想いを巡らす間にも、わたしの意思でピクリと動いてみせるのだった。
さあ、わが羽をばたつかせて、この廃色(はいいろ)の空を、どのように翔び廻ってやろうか。
それともふたたび羽にくるまり、ひとときの安寧を愉しもうか。
一冊の分厚い辞書が、突如目の前に現れた。
そよぐ風に、パラパラとページがめくられる。
風に繰られなくなった後、そのページに書かれた文字をのぞきこんでみる。
《clip my wings》わたしの活動[自由]を制限する
つまり、無理せずに羽を休めろ、という事か。
なんともひねた、お告げだな。
空を翔ぶのは、深く眠りについて体を存分に休めてからでも遅くはない。
やっぱり、寝足りない。
酷く疲れているのに今更気づいた。
そう思うと、今の今まではっきりと開いていた両の瞼が巌(いわ)のように重たくなった。
結局、また暗闇の世界へ戻るしかないのか。
光の輪をくるくると廻り、本能に暴れ疲れ切り、ぱーっと命(こと)切れる羽蟲のように、一度くらいこの羽で、自由に翔んでみたかったよな。
部屋に浮かぶ窓枠がぼんやり遠のき、次の夢へと旅立とうとしていた。