死に顔

「あなたの瞳、いい青色ね。」

あいつの口癖だった。まあ半分嘘で半分本当のような言葉なのだが。私の目の色は黒みがかった茶色だ。日本海に接する県の港町で、父母共に日本人の家庭に生まれた。黒髪に細長い骨格。幼い頃は黄色いけつに青いシミをいくつかつけてはいたが今はない。一般的な日本人。平均的な国民。なのにあいつはそう言い続けていた。あいつは山の多い県の生まれだった。日常的に野生動物との事故が絶えないくらい、田舎に住んでいた。純日本人の家系で、切ることを忘れて伸びた髪に少し白みがかった肌、笑うと八重歯がよく見える人物だった。あいつは生まれた時から色覚異常があるらしく、「あお」色でしか認識できない。なのであいつの頭には黄色も、赤も、紫も、緑も、そして茶色も全て「あお」色にしか認識できない。
ある日、出かけるときに着てった緑の服を見て 深い青だね、と言った。初めて作ってやったカレーを見て そらみたい、と言った。金髪にしておどかせようとしたときに わあ、真っ青だね笑、と言った。初めはあいつがもっていないものに対しての哀れみが強かったが、だんだんとその世界で楽しそうに笑うあいつを見て、嬉しい気持ちでいっぱいになってた。きっと色なんて事故の価値観にすぎない。

でもあいつは交通事故で死んでしまった。最後までまであいつらしいとしか思えない死が今も理解できない。だからあいつの供養にと思いながら、溶けかけのブルーハワイを口に入れた。


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