青を守らなくても素敵じゃないか。
またうなだれた格好をしてこの通りを歩く。体の節のオイルはキレにキレて、軋む音が耳に遅く聞こえる。足は一歩を出すことに無駄に偉大さを強調するせいで、全くというほど進まないし、よたよたと歩いてしまって夕日で伸びた影は元以上に不安定で脆いものに見える。かばんももう重くて金銭や身分は捨ててもいいから置いてしまいたい。
前をねこがひょいと抜かす。彼女はとても身軽で、ワンツーワンツーと早いテンポで進んでいく。でもそのテンポもただ均一に切られたものではなく、絶妙に変えて進む様はまさにドヴォルザークの曲のようで見ていて美しい。重力なんて知らないで生きてきたのだ。彼女はとても不自然に姿を残そうとする。
「あなただって昔は一緒に走っていたじゃないか。」彼女は茶々を入れて笑う。
「いいや、それはあなたが覚えすぎて忘れたんだよ。」私はまともな回答を返すことに失敗する。だから少しばかり頬をあげてごまかす。
「違うわ。あなたはもっと高く飛べたのよ。」彼女の目には気持ち悪いぐらいの黒さが染まって、何かを訴えている。
夕日は僕のことは消す癖に、彼女のことは半永久的に残そうとしている。気に食わないから、ポッケから大人に染めてくれ棒を吸う。すると彼女はすぐにそれを握りつぶして走り出す。
「こんなものはいらないはずよ。」唇に折れたそれをくわえて、
「どう、あんたみたいでしょ。」一服した後、余裕ぶった笑顔で返す。やめてくれ。あんたまでこんな大人にならないでよ。無知なことを一つのことばで終わらせてしまうような大人にならないでよ。半泣きになりそうになって、また新しいのを箱から出して火をつける。あー頼っちまうのかよと呆れ、馬鹿らしく返す。
「アホか。あんたに俺の座譲ってたまるかよ。」
影は少しばかりしゃんとしたはずだけど日が暮れてしまった今には無意味だ。