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いとう はるのすけ
2020年4月18日 22:07
アルバは遠くを見ている。見ているのは遠方の漁船だ。海の強い風を受けて膨らんだ帆が黒く大きく見えるに違いない。彼の指先に水面が当たりだんだんと入り込んでいく。それを嫌がることは当然ないし、そこに違和感を覚えもしない。血液のように巡る。体の芯が青くなる。目の奥に水面があるかのように光る。美しいと皆思うに違いない。 昨夜は珍しくこの海が荒れた。海沿いに生えていたシュロの木が少し痩せ、水面の先にはど