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いつものバーバーで
「いつもので良いですか?」
「はい」
この言葉だけを交わして、あとは成されるがまま。余計な会話もほとんどない。
いつも行っているバーバーの話だ。
小学生から高校生まで野球をやっていたから、ずっと坊主だった。店に切りに行く必要はない。バリカンさえあれば、いつでもセルフで刈ることができる。あの頃は髪型を楽しめない分、微妙に長さを変えて楽しんでいた。
夏は五厘(バリカンにアタッチメントをつけない)、冬になるにつれて、3mm、6mmと長くしていた。見た目はほとんど変わらない。
坊主が当たり前になりすぎて、髪を伸ばしたいと思うことはほとんど無かった。でも、野球分を引退して、坊主である必要がなくなった時から、徐々にその欲が出てくるようになった。
どんな髪型にするにしても、とりあえず伸ばさないと話にならない。人生で初めて、数ヶ月間バリカンを持たずに過ごした。
数ヶ月経つと、髪はだいぶ伸びてきて、マリモみたいな髪型になった。そろそろ髪を切りに行こうと思ったはいいものの、どの店に行けば良いか分からない。美容院はハードルが高いし、かといって1000円カットに行くのも違う気がする。
しょうがなく、姉が通っていた店を紹介してもらい、そこに行くことになった。
「どんな感じにしますか?」
「なんか、良い感じにしてください……」
全くのノープランで行っていたから、それしか出てこなかった。
仕上がりは、ソフトモヒカンなようなトンガリ頭になった。坊主よりはマシだけど、なんか違う。
それから、ネットで髪型をリサーチして、写真で注文するようになった。セミロングのゆるふわパーマをかけてみたり、気合を入れて刈り上げ七三分けにしてみたり、ツイストパーマでチリチリにしてみたり。
どれも、そこそこ気に入ってはいたけど、イマイチしっくりこなかった。
そんな時、いつも通っている美容院のすぐ近くに新しい店がオープンすることを知った。それが今通っている店だ。もう通い始めてから5年近くが経つ。
初めて行った時、どう注文しようか迷っていたら、
「お任せでいいですか? 良い感じにします」
と言われて、今の髪型になった。なかなか気に入っている。しかも、その人は季節によって微妙に長さを変えてくれる。
「暑くなってきたんで、少し短めにしときます」
「だいぶ肌寒いんで若干長めにしときます」
まさに、僕が坊主の時にやっていたことと同じことをやってくれるのだ(勝手にそう思っている)。
だから、今の店はかなり気に入っている。
切り終わった後は、併設のバーでビールとナポリタンを食べて帰る。
次に行く頃は、きっと少し短めになるだろう。