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深夜の公園で

今日の帰り道は、いつもと違う帰り道を歩いていた。

国道沿いの道をひたすらまっすぐ歩いていたら、ぽつんと佇む公衆電話を見かけた。

まだあるんだ、少しセンチメンタルでエモーショナルな気持ちになる。と同時に、まだ使う人って居るんだろうか、と疑問に思った。

今から15年前、中学生だった僕は携帯を持っていなかった。姉2人は中学1年生のときに買ってもらっていたのに、僕だけ中学生の間、携帯を持つことはなかった。

我が家は「テストの成績が学年で20番以内に入れば、携帯を買ってもらえる」というルールだった。お察しの通り、僕は一度も20番以内に入ることはなかった。周りの友達は携帯をパカパカしながら、モバゲーで遊んだり、女子とメールしていて、心底羨ましかった。

何としてでも携帯が欲しかった僕は、両親に頭を下げ、塾に通わせてもらうことになった。

放課後、部活を終えた後、毎日塾に通い、ひたすら勉強した。夏休みも返上したし、大晦日も塾で年越ししたくらいだ。それでも結果はダメだった。国語だけは学年でも3位以内に入る好成績だったものの、それ以外の教科、特に数学が全くダメだった。どれだけ勉強しても理解出来ない。

これだけやったんだから、頑張りを認めて携帯を買ってください。とお願いはしてみたが一刀両断。我が家ではプロセスでなく、結果が全てだった。

携帯を諦めた僕は、リビングに置いてある家族共用のパソコンでメールアドレスを作り、友達とやりとりするようになった。

当時、気になっていたクラスメイトの女子ともパソコンでメールしていた。でも、パソコンが置いてあるのはリビングだ。家族にメールの内容をチラ見されては冷やかされた。耐えられなかった。でも、連絡は取りたい。

どうしても我慢できなくなった僕は、その女子に事情を説明し、電話で話そうと切り出した。その子も快諾してくれて、電話をかける時間だけを伝えた。

深夜、家族が寝静まった頃に、こっそりと家を抜け出し、近所の公園に設置されてある公衆電話に走った。学習机の引き出しに入っていたテレホンカードを電話機に差し込み、ダイヤルボタンを押す。彼女はすぐに出てくれた。

それから、他愛のない話を続け、幸せな気持ちに浸っていた。

すると突然電話ボックスのドアを、トントンとノックする音が聞こえた。

慌てて振り向くと、警察官が2人。

「こんな遅くに何してるの? 早く家に帰りなさい」

まさか警察がくるなんて思ってなかった僕は、焦って電話を切った。なにか一言でも言えば良かったけど、そこまで気が回らなかった。

その後、警察官に事情を説明し、家は目と鼻の先にあるからすぐに帰りますと伝え、無事? 釈放となった。

放心状態のまま家に帰り、そのひはそのまま寝た。

次の日、学校に行き、教室に入ると「なんで電話切ったと?」と聞かれた。

「テレホンカードが切れたんよ」

必死の嘘は、バレてたのかな……。


今はそんな使い方をする中学生なんてなかなか居ないだろうな。


そして、いつかは公衆電話も撤去されてしまう日が来るのだろう。



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