誘惑は突然に……
月に一回、いや二ヶ月に一回くらいだろうか。無性にペヤング(超大盛り)が食べたくなる時がある。
食べたくなるのは、決まって夜遅くだ。トリガーが何なのかは自分でも分からないが、それは突然やってくる。
カップ焼きそばをはじめとする、カップ麺全般はあまり食べないようにしている。体に悪そうだし、原因不明の罪悪感に襲われる。「安い」というのは大きな魅力でもあるが、それでも普段はカップ麺コーナーに立ち寄らないようにしている。
カップ麺自体は大好きだ。20代前半の頃はお金が無かったから、昼と夜はカップ麺で生活していた。その結果、10キロ近く太ってしまった。鏡に映る自分が、自分じゃないみたいになっていた。
それ以来、カップ麺はなるべく避けてきたのだ。
それでも、心に残っている。カップ麺、特にペヤング超大盛りを食べた時の、満足感と背徳感が交じった快感を。
たまにやってくるその欲望を、抑えられたことはほとんどない。どんなに夜遅くても、コンビニに走り、ペヤングを買い、家に帰って即食べてしまう。
ダイエットしていた頃の癖で、食べ物を買うときは栄養成分表を見てしまう。カロリーはどれくらいで、脂質や糖質はどれくらい含まれているのか、気になるのだ。ただ、ペヤングだけは一度も見たことがない。見たところで、罪悪感を増幅させることは分かっているから。
お湯を入れて、3分待っている間の香ばしい匂いを嗅ぐと、幸せな気持ちになる。「やっと食べれる」という幸福感に包まれる。
お湯を切り、ソースとふりかけをかける。生暖かい湯気が部屋の中を一気にペヤング一色に染める。
そこからは無心で、一気にかきこむ。口の中から胃の中まで、麺が途切れることなく、夢中で食べる。
半分程食べたら、納豆を投入する。大体2パック分は入れる。美味しくなるのはもちろんだが、納豆を入れることで、少しだけ罪悪感が薄れる。ほんとに少しだけど。
食べ終わるとすぐに、後悔の波が押し寄せる。
この繰り返しだ。
後悔することは分かっていても辞められない。
これから、買いに行こう。