1.20 大寒
正月二十日。いかにものんびりしいる落語界の正月も初席、二之席ときてきょうでおわり。そして、今朝方の雨で、むしろ大気が緩んだような、大寒。それでも、水は冷たく、米を研ぐわずかの間にみるみるうちに手が赤くなる。冷たい水に、米を炊くのを避けてきた。幸い、正月は食べるものが多い、なんなら、米の水でしのいでもいい。
それでも、そろそろ米を炊こうと決めたのは、暮れの新潟長岡の仕事帰りに買った、バスセンターのカレーを食べるがため。正月明けのカレーは、バスセンターのカレーと決めていた。万代シティのバスセンターのカレーの味は、大衆食堂に親しんだ身の上には、はじめて食べたときから懐かしい味で、旅人には思い出の味でもある。
ならばと三合の米を研ぎ、土鍋にしかけ、満を持しての正月最終日のカレーは、まず、米がうまい。いやぁ、よく炊けた。たえてひさしきバスセンターのカレーを前に、自分の炊いた白米に感動する。単純明快馬鹿ではあるが、生きるのは楽だ。
まったり、もったり、うまみのむこうに香辛料を感じる、どこにでもありそうなおいしいカレー。そう、食べて気がついたが、かつて二回食べたバスセンターのカレーをもはや思い出せない。二回とも旨かったのは間違いないのに。それこそ旅の味だと言われればそれまでだが。これは、きっと、新潟がわたしを呼んでいる。大寒のひるめし。
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書くことは、落語を演るのと同じように好きです。
高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。
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