美容室『新時代』
「美容室新時代」
そう呼ぶにふさわしい時代に突入しようとしています。
はじめまして。(株)SOCO代表の関山です。
まずは自己紹介を簡単に。
美容室を経営している私の視点から、何が 「美容室新時代」 なのか?
これについて考察し、解説していきます。
「シェアサロン」
昨今、このワードを耳にすることが多くなったのではないでしょうか?
「シェアサロン」 の登場をきっかけに業界が大きく変わろうとしています。
この変革のインパクトは、ホットペッパービューティーが登場した時の衝撃と同等のものになるかもしれません。
まず、この大きな変化に結びつく前提として、SNSの登場があります。
twitter(X)、instagram、LINEなどの普及によって、美容室の顧客は組織が独占するものから個人同士が直接結びつくものになりました。
それまでは独立する、辞める、といった時に、
「お客様は連れていけない」 とか、
「辞めるならあと1年はいてもらわないと」 など、謎のルールを押し付けられ妨害される、もしくは続投を促されることが慣例となっていました。
しかし、インターネットの発達とSNSの登場によって、そのような会社都合の一方的な縛りが意味をなさなくなったのです。
(辞めても検索したら出てくるしインスタで繋がっているので)
そうすると、顧客を抱えて独立することが容易となり、独立開業する人が増えました。
その流れと同時並行して、雑誌をはじめとした中央集権的なメディアがSNSにリプレイスされ衰退。
それまで取材はメディアから組織に依頼され、生え抜きスタッフに振り分けられる川上→川下の流れでしたが、今はDMを通じて直接個人が請け負うことが主流となっています。
結果として組織の役割は希釈され 「有名店」 という概念は一部ブランド店を除いて消失。
有名店ではなく 「SNSで有名な個人」 に注目が置き換わっていきました。
これが2010〜2018年くらいまでの間に起こったことです。
組織が握っていた権力が民主化され、所属スタッフをグリップする力が弱くなっていった。
SNSとシェアサロンの登場によって、組織に縛られずに働きたいと思ったら個人のブランドで明日からでも別の場所で働けるようになったのです。
冒頭から組織にとって不利な状況について書き連ねましたが、それでも各種行事、イベントなど、全体でしか味わえない一体感や、「教育」などの、組織にしか果たせない役割があります。
一方で、それら機能や魅力を差し引いても余りある差別化要素がシェアサロン(フリーランス化)にもあります。
それが所得(稼ぎ)です。
多くのシェアサロンにおける売上還元率は80%以上。
100万円の売上があると、手取りのベースは80万円。
自分がフリーランス化するとして、売上×0.8するとどれくらい稼げるかがすぐにわかります。
通常のサロンで80%の歩合設定は不可能。
なぜなら、アシスタントの人件費、広告費、社会保険費など、間接的な費用を多く抱えているからです。
どんなに組織に恩義を感じていて、環境も、働いているスタッフのことが好きでも、やはり「稼げる」という魅力は、自己評価の対価としても人生設計としても大きい。
そして、これほど稼げるならわざわざ高いリスクを背負って独立(出店)しなくてもいい、という考え方も主流になりつつあります。
以前までは、より多く稼ぎたいなら「独立・出店」という選択肢しか達成不可能だった額の稼ぎが、シェアサロンの登場で大きなリスクを取ることなく達成可能になったからです。
以下は私が経営している雇用するタイプの美容室とシェアサロンで働いているスタイリストの売上規模に対する給料の違いです。
同じ売上でもこれだけの差があるのはなぜなのか。
歩合が低いんじゃないか?という考え方もあるかもしれません。
しかし、通常のサロンでは売上200万のスタイリストの手取りが50〜60万くらいというのはよく見かける数字だと思います。
こういった状況が生まれる背景として、先ほど記述したような会社側が内側で負っている間接的な経費負担があります。
(または給与明細上の見え方の問題もあります)
経営者視点では、アシスタント人件費、社会保険費、広告費などを考慮するとこれくらいの額になるのは仕方がないとしか言いようがない。
さらに前項で述べた世の流れで、売上のあるスタイリストほどフリーランス化や独立の意思を持っている可能性が高く、現時点で業績が良いからといって迂闊に人を採用したり歩合設計を上げると、売上のあるスタイリストが辞めた後にあっという間に採算が合わなくなる憂き目を見ることなります。
給料を上げることは簡単ですが、下げることは容易ではない。
故に経営者は簡単に歩合設計を上げることはできない。
上記のことは、私が雇用するタイプの美容室とシェアサロンの両方を経営していて見えてきた事実です。
次に、私がシェアサロンやフリーランス化の流れによって今後美容業界で大きな変化が起こると確信するに至った理由についてお話しします。
弊社ではここ数年(特にコロナ以降) 退社するスタイリストが増加しました。
その理由の多くが、自由に働きたい、より稼ぎたい、ライフワークバランスを重視したい。そういった理由によるものです。
そして、退社したスタッフの多くがシェアサロンに移籍していきました。
一方で、AO/SUN/ACAとは別に、私はシェアサロン 「nuu」 の経営をスタートしています。
nuuは2022年7月に代官山にオープンし、現在3店舗。
開業時は3名でしたが、今では38名の方に利用いただくシェアサロンに成長しました。
1年5ヶ月で35名のスタイリストを獲得。
通常のサロンで、同じ数のスタイリストを育てようとした場合、多大な時間と労力が必要です。
シェアサロンへの移籍を理由として辞めたスタイリストは増えましたが、それ以上にnuuでスタイリストを獲得しています。
奪われているが、より多く奪っている。そんな構図です。
クレイトン・クリステンセンの著書に 「イノベーションのジレンマ」という名著があります。
ベンチャー企業が大きなシェアを持つ巨大企業を大胆なイノベーションで淘汰していくことができる理由を論理的に解説した本です。
ソニー、アップル、amazon、google、etc..
今や誰もが知っている大企業ですが、元々は家のガレージから始まった無名のベンチャーでした。
なぜお金も人材も知名度も、なにもない新興企業が急成長し、すでに市場を制圧している大企業を超えていけるのか?
本書によると、
①.すでに成功している企業は現在の成功モデルに対応するという、持続的イノベーションを行うことを主目的としている。
②.故に自社のビジネスモデルを毀損するものや、既存の評価基準や顧客のニーズに適っていない破壊的イノベーションを受けいれることはできない。
③.結果的に破壊的イノベーションを推し進めることができる新興の小さな企業が新しい市場を形成し、元々の優良企業を市場から退場させるという結果になる。
これがクリステンセンの主張です。
この論理に準えると、今まさに、美容業界では(美容室)というビジネスモデルが 「シェアサロン」 によって破壊的イノベーションに晒されている状況だと言えます。
①.「雇う」 「雇われる」 という旧来の価値観が瓦解していくことによって、通常の美容室のビジネスモデルが立ち行かなくなっていく。
②.体制変更しようにも、社内調整や反発を考えると難易度が高く、日本においては解雇することは労基法上難しいのでドラスティックな改革も難しい。
③.その間、新たなビジネスモデルである 「シェアサロン」 がマーケットを攫っていく。
これが現在起こっている美容室経営における 「ジレンマ」 です。
上記以外にも、経営視点でのシェアサロンの優位性はたくさんあります。
ですが、そのことを書き連ねることが本意ではないのでこれくらいに。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
「シェアサロンに移籍するので退社する」
そんな状況が東京を中心に増加しています。しかし、まだ入口も入口。今後全国に波及していくでしょう。
そんな世の流れの中、どのように組織的な美容室を運営していけばいいのか?
この課題に対する回答を与えなくてはいけません。
私が導き出した答えは、
【組織×シェアサロンのハイブリッド型美容室を作る】
「組織 < 個人」 「働き方の自由度」 「効率よく稼ぐ・成長する」
これらが今の時代の肌感覚。
3つの条件成立させながらアシスタントを育て、スタイリストの売上を伸ばしていくこと。
フリーの良さと組織の良さを併せ持つカタチ。
私は、これが次の時代の美容室に求められる在り方だと考えています。
「雇う側」 > 「雇われる側」
「教える側」 > 「教わる側」
「経営者」 > 「従業員」
これらは、はるか以前から常識と思われ成立してきたパワーバランスです。
しかしいま、このような価値観のスタンダードが急速に旧来のものになりつつあります。
インターネットやSNSを活用してフリーランスとして独立する。
様々なツールを使い、組織にいながら別の方法で稼ぐ。自ら自由を創造し、所得も増やしていく。
これが今のスタンダードです。
価値観の遷移は美容室業界に限らず社会全体の変化として加速しています。
もはや 「雇う」 「雇われる」 という構造自体が終焉に向かっているようにすら感じる。
一方で、自由を獲得することや、稼ぎを増やすということは、それ相応のリスクを負わなければ資本主義市場では達成不可能。
雇用されないということは、報酬の補償がないということ。
当たり前ですが、売上がゼロなら収入もゼロ。
それは自己責任論で片付けられる弱肉強食のサバンナのように乾いた地平です。
しかし、時代が変化を望んでいるのであれば、組織としては流れに合わせた構造に変革していくほかありません。
なぜなら、会社組織もまた、圧倒的な弱肉強食の市場に身を晒されているからです。
まとめます。
冒頭でお伝えしたように、シェアサロンやSNSの台頭を起点とした働き方への意識変革は、美容業界にホットペッパー登場以来の大きな衝撃をもたらすでしょう。
今の美容師(美容学生)の価値観を箇条書きで表すと以下のようになります。
【現役美容師】
・ フリーランスは選択肢として当たり前
・ 時間に縛られず効率よく稼ぐ
・ 仕事 < プライベート
【美容学生】
・ 最速でスタイリストになれるサロンを選ぶ
・ 就職先は必ずしも有名店である必要はない
・ フリーを選択できるサロンを選びなさいという進路指導がある
・ デビュー後売上を伸ばせる環境かを吟味
これらは現在進行形で起こっている意識変化です。
記述しながら、私が美容師を始めた頃とは真逆の価値観であることに驚きました。
それくらい時代は変わった。
「みんなの働き方が変わった。美容室は変わっただろうか」
今の私のテーマです。
時代は変わったのに美容室はあまり変わってないように思える。
経営業=変化対応業です。
組織が変わら(れ)なければ、今後時代の変化と共に経営的に先細っていくでしょう。
そして、その状況はさらに加速していくと予想します。
コロナ以降、フリーランスというワードを広告やSNSで目にする機会が増え、「もっと自由に」 「もっと稼げる」 など、新しい働き方についての理想が多く語られるようになりました。
しかし、実際は個人も企業も耳障りの良い言葉を並べることに腐心している場合がほとんどで、自分ごととして責任を果たそうとしている人は少数であるのが現状。
そういった意味では、価値観自体は変われど、自責の念を持ち仕事と向き合える人が、お金や自由を手にするという本質は時代を経ても変わらないでしょう。
以上が、現在の業界変化への私の考察になります。
記述した内容が少なからず的を射ているのであれば、時代と業界の変化に対応することは美容室経営にとって必須であり急務となります。
「みんなの働き方が変わった。だからわたしたちも変わる」
これが美容室経営者としての私の結論です。
最後まで目を通していただきありがとうございました。
業界の動向について乱雑に書き連ねましたが、本文には私個人の主観が多分に含まれております。
内容についてはご覧になられた方それぞれで判断ください。
また、私の考えと同じような感覚で業界の次を見据えていらっしゃる方がいればシェアサロンへの業態変更のご相談も承っております。(無料)
すでに美容室を経営されている(もしくはこれから始めたい)方で、
「人が辞める」
「売上が伸ばせない」
「将来が見えない」
「シェアサロン化のやり方が知りたい」
などの問題を抱えていて、状況を改善したいと思っているいる方はお気軽にインスタグラムからDMください。
@yoshihirosekiyama
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