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フランチャイズ本部のはじめかた【その.9】〜内装デザイン、はじまる〜
2024年3月初旬。
ついに名古屋出店が決まり、我々は出店に向けてやるべきことを分担して進めていくことにした。
私 → 内装工事、利用者の募集(広告配信)
ふみ → 融資、物件契約
もう一つ、重要な決定事項としてオープン日の決定がある。
「とにかく早い方がいいでしょう」
ということで、6月1日のプレオープンを目指し出店準備のスタートラインを切った。
さて、私の持ち場である施工と内装デザインをどうするか。だ。
90坪となると、予算もかなりのものだろう。
過去出店してきたもっとも広い店舗で40坪。
このサイズの物件は、私にとって費用も工期も未知だった。
なるべくコストを抑えるために、内装デザインは自分でやることに。
デザインはやるとして。問題は施工。
私は愛知に知り合いの施工業者さんがいない。
現地で施工をお願いできる業者を見つける必要がある。
施工業者さんの選定は重要だ。
さらに言うと、現場監督さんが「超」重要。
工事現場では様々な職人さんが出入りして工程が進行していく。
基礎工事、電気、水道、塗装、左官、etc…
いわばガテン系のMMA会場だ。
オクタゴン内に素人が非武装で踏み込んで腑抜けたジャブでも打とうものならすぐにKOされてしまう。
そこで戦場を熟知している現場監督さんが必要になる。
優秀な現場監督さんがいないと、現場は殺伐とし混乱する。
逆に現場監督さんがしっかりしていると、とても和気あいあいとした雰囲気で、仕上がりも良いものになる。
私は名古屋に施工会社の知り合いがいないので、まずは東京の知り合いの業者さんに伺ってみることに。
nuuとsuu、東京3店舗を施工していただいた内装屋さん(EMVARさん)だ。
私
「いつもお世話になっております。名古屋でnuu出店が決まったのですが、遠方でも工事はお願いできますか?」
EMVAR
「出店おめでとうございます!可能ですよ。沖縄でも施工したことがあります」
私
「おぉ!そうなんですね。進め方としてはどういったカタチになりますか?」
EMVAR
「我々の方で名古屋の職人さん達にアポイントを取って、発注先を決めリモートで進めていきます。業者選定は値段の安さもそうですが、誠実かつ安心して進めていけるかどうかを優先したいと思います」
私
「わかりました。また、今回も私のデザインで進めていこうと思っておりますが大丈夫ですか?」
EMVAR
「問題ありません。その方が意思決定は早いと思います。ちなみにどれくらいの大きさのテナントでしょうか?」
私
「90坪です」
EMVAR
「おぉ笑、それはかなり大きなプロジェクトですね!承知しました」
私
「6月1日プレオープンを目指しています」
EMVAR
「!?(バカなの?)」
私
「デザインを3月中に終わらせて、見積もりと基礎工事内容を4月初旬までに決定。4月中旬の着工を目指すことは可能でしょうか?」
EMVAR
「承知しました。かなりタイトなスケジュールですが、やってみましょう」
自身で出店したことがある方であればわかると思うが、90坪の店舗を(居抜きとはいえ)1ヶ月と少しで完成させるというのはかなり無茶な要求である。
とはいえ、施工のスピードは出店において重要な要素。
工期が伸びれば伸びるほどカラ家賃が発生してしまうからだ。
過去にもEMVARさんには無理難題をお願いしては、無茶な納期をねじ込んでいただいてきた。
プロジェクトの締切がタイトな場合に私がよくやる手法がある。
基礎工事を進めている間にデザインのディテールを詰める方法だ。
店舗工事の序盤は軽量鉄骨、塗装、左官、などの基礎工事が締める。
①レイアウトを先に固めて基礎工事を走らせる。
②デザインのディテールは工事中に詰めていく。
今回もスケジュールがタイトなので↑の方法で進めていくことにした。
とはいえ、これは施工屋さんとの意思疎通や連携が取れていないとトラブルに繋がる可能性があるのであまりオススメできない。
また、自分がオーナーかつデザイナーで意思決定を一手に握っていないとイニシアチブが取れずに破綻してしまう可能性がある。
本来は基礎、デザイン、全て固めてから工事をスタートするのがベストだ。
ご利用は計画的に。
我流のデザインプロセス
さて、以下に私が実際やっている内装デザインのプロセスを紹介したい。
このやり方であればフォトショップやイラストレーターを使える人であれば比較的やれてしまうのでないかと思う。
デザインといってもさほど難しいことはやっていないのでデザインと表記するのも烏滸がましいが、何らかの参考になれば幸いである。
①【基礎図】
まず最初にやることは、施工業者さんに基礎図を引いてもらうこと。
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物件候補が決まると水道やガス、電気容量など、インフラの調査と同時に現地採寸をお願いしている。
↑今回は居抜きだったので現状そのままを平面図に。
この平面図を元にレイアウト設計がスタート。
②【レイアウトタタキ】
次にありものの素材パーツを組み合わせてレイアウトのタタキを作成する。
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この作業はフォトショップ、イラストレーターどちらでも可能だ。
私はカット椅子やシャンプー台などの各種PDF、PNG素材を持っているので、まずはそれをマインクラフト式に置いてみる。
何度も調整を繰り返すうちに、このハコであればこういったレイアウトがベストかな。という着地がなんとなく見えてくる。
③【デザインディテール】
レイアウトのタタキが決まったら、イメージ画像を大量に引っ張ってきて(ピンタレストなんかがおすすめ)色、素材、形状など、インテリアのアイデアを並べていく。
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プロジェクトによっては企画書を作成して方向性やトンマナを明確にすることも。
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各種什器(セット台やレセプション台など)のサイズ適正は多少経験値がいるが、必要であれば他の店舗にある什器をメジャーで測ってサイズ想定すれば解決する。
また、使用素材によってコストが増減するので、コストカットのアイデアや素材知識の引き出しも重要。
それらひっくるめてインテリアデザインの着地点を模索していく。
④【減算処理】
ここらへんまでを自分でやって、あとは対面なりリモートで打ち合わせて形状や使用素材などの詳細を詰める。
その後見積もりを投げてみて、上がってきた見積もりに対して減算処理を検討。
減算処理とは「これは予算オーバーだな」という箇所を洗い出し、予算内に収まるよう削ぎ落としていく作業だ。
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初回の見積もりは想定より高くなることが多い。
私の経験にはなるが「想定よりコスト高になりやすいランキング」をつけると。
1位「造作家具」
2位「天井(電気系統)」
3位「特殊塗装(モールテックス等)」
だろうか。
とにかく1位の「造作家具」は要注意だ。
やりたいものが手の込んだものであればあるほど、驚愕の見積もりが提示されることがある。
その場合、押し切るか、諦めるのか。もしくは近しいもので代替できないかを検討する。
減算処理とはつまるところプライオリティの設定である。
予算とデザインを天秤にかけて取捨選択する箇所を決める作業だと考えればよい。
やりたいものを全てやれるのが理想だが、人生そううまくはいかないものだ。
戦略的撤退(妥協)が必要な場面は訪れる。それが減算である。
プロジェクト全体を通じたコアコンセプトに対して「譲れるもの」「譲れないもの」をあらかじめ自分の中で明確にしておけば、自ずと着地すべき場所は見えてくる。
こんなやり方で今まで8店舗ほど設計・デザインしてきたが、比較的トラブルなく着地してきた。
ただし、我流のプロセスで進めていくことが可能かどうかは施工業者さんとの関係性にもよるだろう。
信頼関係のある方と一緒にお仕事できるかがプロジェクトを円滑に進めるためのカギとなる。さもなくば空中分解しかねない。
私がいつもお願いしているEMVARさんは10年ほど一緒にお仕事してきた仲で、社長が元大工さんなので職人さんとの関係性構築にも長けている。
施工業者選定の際は意思疎通が円滑にできる業者さんかどうかを事前にしっかり吟味しておくことをオススメする。
栄店も上記の進め方で設計・デザインを進めた。
とはいえ、今回はユニストア。私の一存だけですべてを決めることはできない。
オーナーであるふみくんの意向も踏まえながらの調整が必要だ。
また、施工業者さんは名古屋の業者さんだったので、そちらサイドへの調整も必要だった。
自分がオーナー兼デザイナー兼クライアントの案件は何度も経験してきたが、デザイナーの立ち位置でプロジェクトを進めるのは今回が初。
自分のイメージをある程度推し並べつつ、関係各所の意向をどれくらい取り入れていくのかの調整はなかなかスリリングである。
おそらく仕事としてクライアントと向き合われている方の日々の苦労はこういったことなのだろうと、素人ながらに体感した。
そんな山あり谷ありを通過し、栄店は着工を迎えることとなる。
次回は栄店の利用者募集(集客)について書いていきたい。
つづく。