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シェアサロン経営のはじめかた 【その7.】1年の結果とその先へ


利用者獲得のための様々なトライ&エラーを繰り返すうちに、徐々に結果が出てきた。
nuu femの1年間の利用者数の推移は以下のとおり。


スタート時点で1名だった利用者が9ヶ月後には18名となりほぼ満員に。
nuuとnuu femに1年間で見学に来てくれた方々は70名以上。
そのうち37%にあたる26名の方が利用を開始。

オープンから1年間の売り上げ推移表がこちら。



上原1人でスタートしたnuu fem。
初月の売り上げは137万円。
色々な試みを進めていくうちに徐々に増えていき、1年後の12月には月商550万を達成。
2店舗合わせると2023年の年商は9600万ほどになるまでの成長を遂げた。


以下の表は、私が初めて独立開業した雇用型美容室であるSOCOの1年目の売り上げ推移とnuu + nuu femの2023年度の売り上げ推移の比較である。



SOCOは4年で4店舗、社員数40名と比較的早めな成長速度で伸ばすことができた。
しかし、nuuの伸びはさらに早い速度の成長を示している。

なぜこれだけ早い速度で成長できるかというと、「育てる」という時間軸をスキップしているから。

さらに人が「辞める」という影響も受けにくい。
利用を止めた方がいたとしても新たに利用者募集をかけ、短期間で新たな利用者を獲得することができる。

美容室経営において不可避な難問である、「育てる」→「辞める」の埒外にあるビジネスモデル。
「人が辞める」経営リスクがシェアサロンにおいては緩和され、成長スピードが速く、運営も安定する。

ここにシェアサロンが業界を塗り替えてしまうポテンシャルと恐さがある。




2010年半ば以降から働き方の価値観が大きく変わり、私は危機感、焦燥感、あるいは喪失感を抱えながら事業を運営してきた。

離職によって売上は下がり、社内のパワーバランスやモチベーションが激しく上下する。

退職の意向を聞きつけると、その都度あらゆる手段で引き止め、新たに人員補填の手立てを模索し、影響を最小限に食い止めようと奔走した。

常に「ご相談があります」に怯えていて、そしていつも虚無感を抱いていた。「いつまでこれを続ければいいのだろう」

だが、nuuをはじめてみて今まで頭を悩ませてきた様々な悩みを解消する術が棚からぼたもちの如くあっさりと見つかった。

それは私がシェアサロンをはじめていなければ気付くことのなかったであろう美容室経営における合理的で残酷な真実である。



一方、良くも悪くもこのビジネスモデルの是非が問われている。
「人を育てていない」「業界に貢献していない」「ズルい」
教育やモラルに関するそんな声も聞こえてくる。

現在シェアサロン経営の先端を走っているトッププレイヤーの多くは美容師以外の人たち。

業界のしがらみや前例にとらわれない彼らは、美容室経営を美容師出身の美容室経営者とは別の視点で捉えている。

マーケティング、ブランディング、広告。
美容室経営をロジカルに扱い、エクイティで資金を調達し、全速力でシェアを取りにいっている。

そう。イノベーションのジレンマが存在しない。
だから爆速で成長できる。


ビジネスモデルの在り方に対して賛否が立ち上がることも当然ある。
しかし、今一度過去を振り返ってみてほしい。
業界とは常にそうであったではないか。

時代の変化と共に新しいプレイヤーが現れ、人の感情と共にスタンダードが移り変わってきた。

それが今シェアサロンという業態に向かっているというだけであって、5年後にはメインストリームが別のものに移り変わっているのかもしれない。



「辞めます」
「独立します」
「スタッフを連れて行きます」

この言葉を聞いて、人によっては怒りの感情を覚え、人によっては説得に向かい、人によっては諦めと向き合う。

「せっかく育ててやったのに」
「あいつは恩知らずだ」

美容室のバックヤードで延々と続けられてきた舞台裏。

私も感情で向き合う時があり、そしてそれが有効に働く場面もなくはなかった。

独立当初の私は情熱に燃え、クリエイティビティを用いて業界のトップになりたいと夢想していた。
そして野心を叶えられそうな優秀な人材が揃っていた。

高望みで、馬鹿げているかもしれないが、追い求める価値がある夢。
それをこの場所で叶えること。
それこそ、あの時私が美容室経営者として抱いた野心だった。

しかし、流れる月日の中で多くの情動が収束し、消え去っていった。
そして誰かが辞めるという最終局面になって感情を振りかざして心を動かせる時代でもなくなった。


いや、そんな悲観的なことではない。

情報の民主化により閉鎖的だった価値観に穴が開き、すべての人がやりたいことを明日からスタートし、自分の人生を生きることができるようになったというだけなのだ。




nuu創業から1年で結果は出た。
それはそれで、嬉しい。
しかし、私は美容室経営者として何を目指したかったのか。
収束していった何かを今一度見出すことはできないだろうか。

そんなエモい禅問答を彷徨いつつ、ここ数年で心通わせ苦楽を共にしてきたスタッフの多くを失い、現状を変えなければさらに惜しみなく奪われ続ける未来が差し迫っていることだけは明確に理解できた。

社会が、スタッフが、時代が、と原因を周縁に見つけようとしても何も変わらない。

不満を並べることでむしろ時代から逆行し、いずれ立ち行かなくなる。
環境の変化と共に自分も変わらなくては。

かつて信じた感覚が既に時代遅れであると受け止め、新たな事業の柱を構築しよう。



nuuの進捗を振り返りつつ、いろんな想いと共に次の一手を模索していた。



つづく

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