⑦不妊治療 不妊症は馴染みのない他人事

女性は生理前、生理中、ピルの服用、更年期、閉経など
若い時から何十年もホルモンバランスと戦っている。
イライラするし、食欲は狂うし、肌荒れに悩まされるし、
落ち込むし、涙が出てくるし。
大人だからコントロール出来るでしょみたいな、
女は感情で生きてて大変だねぇみたいな、
そんな世の中の冷たい風を浴びながら
必死に自分と世間のバランスをとろうとする。
本当にみんなよく頑張ってる。

体外受精をする決断をしてから数週間、
いろんなことを調べて、考えて、聞いて、決断して、の繰り返しで頭の中は常に考え事でいっぱい。

そして最初の壁。自己注射。
まずは看護師さんとの練習。慣れた口調の説明を聞き、実際打ってみましょう。自分のタイミングでどうぞ!
と言われた。
自分で自分に注射を打つなんて怖すぎてできるわけない
と思っていたが、忙しそうな看護師さんがとても笑顔で待ってくれていて、その圧に負けた私はすんなり出来てしまったのだ。意外と人は強い。

こうして自己注射や飲み薬や点鼻薬を時間通りに行い、
言われた通りに通院し、あっという間に月日が流れた。
いろんな薬のせいなのか、とっても前向きな日と、
逆にとんでもなく落ち込んでる日が現れて、
気分屋さんの最上級みたいな私。
薬を飲み忘れて生理がきてしまったらまた全て振り出しに戻るし、必ず冷蔵庫に保管しなければならなかったり、
自己管理という能力が鍛えられる数週間だった。

そんな採卵までの準備期間中に旦様の会社の社長さんが、
【社員の家族に感謝を伝える会】
というご飯会を開いてくれたので参加した。
途中まではとても素敵な会だったのだが、
『子供計画はどうなったの?』
という旦那の上司からの発言。
そして結婚したばかりの社長が続けて、
『同級生にさせようや!』と言った。
専業主婦の私は、いわゆる一般的なマタハラを受けたことがなく、面と向かって他人に子供の話をされたのが初めての経験だった。
今朝自己注射をしてきて、帰宅したら薬を絶対に飲まなきゃいけなくて、明日は病院行かなければならない私。
身体と顔が固まって言葉が出てこない。
旦様が『そればかりはタイミングなのでなんとも〜』と
フォローをして誤魔化してくれたが
それを聞いて尚更感情がいっぱいになり、
愛想笑いをしながらトイレに駆け込んだ。

【どんなに稼いでいても、どんなに地位や名誉があっても
私はあの時の二人の発言を、顔を、一生忘れない。】

私が不妊症ということを、
私たち夫婦が体外受精を行うことを
知らないから悪気のない発言なのは理解できる。
傷つけるつもりも一切なくて、
むしろ気を遣って話を振ってくれたのかもしれない。
だとしても、そうだったとしても、
私は傷ついた。トラウマになった。嫌いになった。

いつも優しくて、本当に愛情深い、旦様の上司と社長が
何も考えず発言して傷つけてしまうほど
世の中に不妊という言葉は馴染みのない他人事なんだと
改めて実感した。

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