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【詩】名前

明け方
私に言った

春の前に咲く花と
言葉を交わしたあの人の名前を
忘れない

遮った電車の窓
擦り切れたレール
瞳に映ったその景色の
迷いさえ美しい

空の色が変わったことに
気づいていたあなた
階段をひとつ飛ばした
踊り場の影に潜り込んだ

熱のこもったからだ
忘れちゃいけないと
雨は殴る