ホームパーティに行った日からあの味が忘れられなくて
10月の土曜
すっかり秋になって昨晩はずいぶん涼しく感じられていたので、薄いコートを羽織って外出する。
が、しかし、この日は意外と暑かった。
家を出てすぐにコートを脱いで、片腕に掛けて駅に向かう。
秋って難しい。
午前はカルチャースクールで短歌講座。
この日提出した歌はインド旅行のときに詠んだ歌だった。
自分の祖母よりも年上の方々が参加しているスクールなので、わたしの歌は皆さんには理解されないことが多い。
しかし、インドの歌はその詠んだときのわたしの感情に想像が及ぶとの評価だった。
彼女たちなりに知っている「インド」があって、それに馴染むものへの共感や、裏切るものへの感嘆なのだろうか。
インド行ったことあるわよ、とおっしゃる方もいて嬉しかった。
行ってみたいわあ、と言ってくださる方も何人かいて、それも嬉しかった。
講座のあとは電車に乗って移動。
秋葉原駅で降りる出口を間違えたらうまく乗り換えができず、駅の周りを二周した。
東京って難しい。何年経っても慣れない。
待たせてしまうかと思ったら先方も遅れていて、わたしのほうが早く着いた。
メニュウを見ながらゆっくり選ぶ。
あれこれ気になるものはいろいろあったが、結局ファーストインプレッションを大事にして最初に良いなと思ったものを注文した。
ランチを共にしたのは、日本に遊びにきている友人で、カタコト日本語で話す。
カタコトと彼は言うけど、日本語を共通言語として日本人と不自由なくコミュニケーションが取れるってすごいことだ。
東京タワーを遠くから一緒に眺めて、解散した。
一度家に戻ってゆっくりする。
軽く昼寝をしたら再び出かける気力を吸い取られてしまったが、頑張って布団から出た。
昼寝からの覚醒は、朝の目覚めよりも難易度が高いことがしばしばある。
夜は友人の新築祝いのパーティにお呼ばれしていた。
花束を買いたいな、といつも行く花屋に行くと今は忙しいので50分は待ってもらう、と言われてしまった。
そんなに待てないので、駅から少し歩く花屋へ向かう。
初めて行く花屋だったが、丁寧に説明をしてくれて、包装もかわいらしくて、とても素敵な花束になった。
これは他の人にもあげたいなあ、と翌日会う予定だった祖母への花束も作ってもらう。
駅から遠い花屋だったので、急いで家に戻って祖母の花束を置き、また駅に戻る。
無駄足を踏む価値はある花束だったので問題はない。
友人宅はぴかぴかに綺麗なおうちで、そして人がたくさんいた。彼らの共通言語は英語なので、私も英語で話す。
簡単な文法だけど、コミュニケーションはとれているので義務教育に感謝である。
友人の友人のお子さんが、日本人と日本語で話したい!と言ってくれた。
「オハヨウゴザイマス」とその子の親御さんが知っている日本語を適当に話したら、「朝じゃないのにオハヨウはおかしいよ!」と怒っていたのがかわいかった。
日本語って難しいよなあ。そんな国に暮らしているのすごいよなあ。
ホームパーティにはケータリングが用意されていた。
その家主はインド人なので、インド料理だったのだが、そのうちのひとつがものすごくおいしかった。
ちょっと料理の名前忘れちゃったけど、あの料理がおいしかったんだ!とわたしはあの日からずっと言い続けていて、その料理を出すインド料理店にいくつか行ってみたけど、アレンジが少し違ってあの時ほどの感動をまだ得られていない。
なので、そのケータリングのおしぼりから店を割り出し、近々その店を直接訪れてみようと思っている。
この日はたくさんの感情に出会えた日だった。
日本語を共通言語に誰かと関係を築いていけているように、英語を使ってもっとたくさんの人と心でつながっていきたいと思ったし、
シンデレラを探す王子様のごとく、料理のためにこんなに必死になれる自分が嬉しかったし、
こういう日常をどんどん短歌に詠んでいきたいと思った。