『初めてのインドひとり旅』5日目
◎5日目10/17
朝5時半にガイド夫婦の奥様、あきこさんが宿に迎えに来てくださった。初めてお会いするのに、すぐ打ち解けられる明るくおしゃべりが上手な方だ。
長年バラナシにお住まいで、以前は宿を経営されていたそうだが、コロナをきっかけにお辞めになったそうだ。
まずは、ダシャーシュワメードガートに、朝のお祈りの儀式を見て、ガンジス河を遊覧するボートに乗るために向かう。
途中、たくさんの猿が大移動していたので足止めをされる。
この街には、牛、犬、猿、羊、馬、イタチみたいなの、ねずみ、鳥その他いろんな動物をあちこちでみかける。
そして僧侶による朝のお祈りの儀式。ガイドのあきこさんお気に入りの僧侶だそうで、さすがの動きに目を奪われた。
河辺で何人もの僧侶がお祈りの儀式をしていた。それぞれ所作に個性があって興味深い。
その後、朝日を浴びながらガンジス河を走る乗り合いボートに乗った。涼しげに吹く風が気持ちよく、そしてインドの方々が朝日に照らされて沐浴する姿も岸辺からとは違った視点から見え、より一層神々しく映った。
この風景を見られて、バラナシに来て本当に良かった、と改めて思った。
ボートに乗った後しばらく歩いて、ガイドのあきこさん厳選の朝食スポットに連れて行ってくれた。
じゃがいもの小さなコロッケみたいなものに豆の入ったカレースープみたいなのと、ほんのり甘いタレのようなものをかけた料理。スパイスが爽やかに香り、めちゃくちゃ美味しくて、次の日も1人で食べに行った。
朝の時間帯だけ、シャッターが閉まった営業前の店舗前の路上で商いしている。
2軒目は、そこからまたしばらく歩いて、バタートーストの店。
案内していただかなければ到底辿り着けない路地の奥にある。
ここのパンを焼く炭の火力は他の店と比べて格段に強いらしく、表面がカリッと香ばしく焼かれていて良かった。添えられた、マサラソルトを着けて食べるとさらに美味しかった。
その後、金色のお寺を見るためのチケットを買うオフィスへ行き、そこでガイドを奥様から、バラナシ生まれバラナシ育ちの旦那さん「さんちゃん」に交代した。
さんちゃんはインド人でありながら日本語が上手で全く不自由することなくコミュニケーションがとれた。耳から聞いただけの独学でここまで話せるようになったという。事あるごとに「インド人はうるさいな」とか「インド人はいい加減だからな」と言うのが冗談にとれないほど日本語が堪能だった。
そのお寺へは、外国人はパスポートを提示してお高い入場料を支払い、スマホを含む荷物をロッカーに預けたりした後、何人かのグループでお坊さん1人に先導されて見学するシステムだった。わたしと同じグループにお若いインド人男性2人とイギリス人女性の3人組が一緒で、彼らはなんと一宮市と同じ愛知県の豊橋市にある大学に通っていたという。今はイギリスでお仕事をしているらしく、その中の1人の男性がバラナシに親族がいるとのことで観光に訪れていた。
お寺へは、ガイドのさんちゃんに手続きをしてもらった後、わたし1人で見学に入ったので、日本語が少し話せるこの方たちのおかげで楽しく過ごすことができた。
お寺を見学し終え、素敵な3人組と別れ、その後わたしはガイドのさんちゃんに大きい火葬場のあるマニカルニカーガートへ連れて行ってもらった。昨日、アントニーに迫られた場所だ。この場所のすぐそばで生まれ育ったさんちゃんはとても詳しく火葬場のことを説明してくれた。
ご遺体が河の水であらわれ、火をつけられ、燃やされて灰になり、河へ流される。そのそばで河に浸かって焼け残った遺品を拾い集める人達もいる。
すぐ目の前で淡々と行われているその光景を見ていると、死が特別なものではないような気がしてきた。もしくは、死だけが特別なことではないんじゃないかという気がしてきた。
朝目覚める、食事をする、家族と共に暮らす、友人と語らう、仕事をする、眠りにつく。そんな何気ない毎日が奇跡的に起こっている事の連続なんだな。そんなことを感じさせてくれた場所だった。
その後、ガイドのさんちゃんとチャイを飲み宿まで送っていただいて別れた。
ガイドは午前中だけお願いしていたのだけれど、昼食もご一緒させていただけることになった。一度部屋へ帰り、シャワーを浴びてひと休みして準備をした。
実はこの時まで翌日以降の予定は決めかねていて、なんとなくインド北部のラダックという地方へ飛行機で移動しようかと思っていたのだ。そこは、ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈に挟まれた一帯で、街の標高が3000メートルを越えるという。まるで月面のような地形と、美しい湖などの風景が見られ、レンタルバイクを借りて走ることもできると聞いていた。
部屋に帰り、航空券やラダック地方のことを改めてネットで調べたら、現在朝晩の気温は氷点下にまで下がっているらしい。冬の装備はこちらでなんとか調達できないこともないが、1番の不安要素は高山病にかかる可能性があるというところだ。わたしは普段から血中酸素濃度が低いのに加えて、インドに着いてからずっと軽い頭痛がしている。ここで無理をしたら体調を崩しかねないと思い、今回はラダック行きを断念した。
それに何より、ここバラナシが好きになり、もう少し残りたくなった。
宿で待っていると、ガイドのあきこさんが迎えに来てくださり、お昼ご飯を食べる店に、最後のラッシー屋含めて3軒連れて行ってくださった。
どこも素晴らしく美味しく楽しい店ばかりだった。話を聞くと実は、わたしも買って熟読したガイドブック、あの「地球の歩き方」でバラナシのレストランを紹介しているページは、あきこさんが監修しているのだそうだ。
美味しいお店に詳しいだけでなく、地元の飲食店が、インド旅YouTubeや、SNSなどでお店を知った観光客に迷惑していないかなども配慮してみえた。
そして何より食べるのが本当にお好きな方なので一緒に食事させてもらって楽しかった。
その後、地元のスーパーや日本の「しまむら」みたいな店、電気街でスマホの修理店などあちこち連れて行ってくださった。
スーパーでは昨日、宿のそばに住むインド人Baliの友人の店でご馳走になったのでお礼に彼らの子供にプレゼントするチョコレートを買った。
買い物を済ませ、その後道端のチャイ屋でインドの政治のこと、経済のことたくさん教えてもらえて勉強になった。
特に、バラナシを愛するというモディ現インド首相の政策で、街はどんどん綺麗に整備されていくが、街でずっとお土産屋や観光に携わってる人達が立ち退きや規制の対象になり憂き目にあっているという話に憤りを感じた。
あきこさんには、ガイドの仕事外なのにいろいろ案内してくださりありがたかった。
あきこさんと別れ宿に戻ると、近所のBaliから連絡があったので、ちょうど昨日のお礼に買ったチョコレートを渡しに行った。
そしてBaliが翌日、ガンジス河を渡った対岸にあるラムナガーという古城に行かないかと誘ってくれた。
Baliは仕事を休んで行くというので申し訳ない気もしたが喜んでお願いした。
明日はまたまたガイドのあきこさんに、朝ご飯の店に連れて行ってもらう約束をしていたので午後1時にBaliの家にわたしが迎えに行くことにした。
その日は、インドにも宿にも慣れたせいか久しぶりに熟睡できた。
屋根の下で寝られることに感謝した。