#4時の雫_水の音(2/3)
水を太鼓で表す
雨の感覚を音に表し、様式美を確立させたのが歌舞伎かと思います。演劇学者の河竹登志夫氏によれば、
と指摘した後、次のようにも述べています。
水の音を愛でる
河竹氏の指摘する水の美意識について思い起こすのは、著名な随筆「水の東西」(山崎正和)です。そこでは西洋の吹き上がる噴水と日本の鹿威しに代表されるような流れる水とが比較され、西洋と日本の水に対する美意識の相違が指摘されています。日本人は自然に流れる水、さらには流れるという時空間を鑑賞しているとの指摘に首肯された方は多いのではないでしょうか。
『日本国語大辞典』(第2版)によれば「鹿威し」が文献に現れる早い例は江戸時代の俳諧のようですが、流れる水の音を鑑賞するという行為は平安時代の文献にも見られます。次の例は『源氏物語』(「少女」巻)で秋が好きな中宮のために作庭するなか、水の風景だけではなく「音」に趣向を凝らしている様子が描かれています(以下、本文はいずれも小学館の『新編古典文学全集』による)。
また例えば、『枕草子』(第136段「なほめでたきこと」)では賀茂神社の祭りの舞において、舞人の歌声だけではなく、水の流れる音をも美の対象として鑑賞しているのがわかります。
水の流れる様子だけではなく、音を鑑賞する行為は『徒然草』にも読み取れます。
(時の雫_水の音(3)へつづく)
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【参考文献】
日本の美学編集委員会(1998)『日本の美学 水 流れとうつろい』27 ぺりかん社
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