小型化ペット (1分小説)
ドーベルマン並みに、大きなプードルがいることをご存知だろうか。
正式には、スタンダード・プードルという。
あの大きさが、スタンダードだと考えられていた時代があったのだ。
しかし、わずか何十年かで、スタンダード・プードルは、大型犬になってしまった。
人間たちが、室内で飼いやすくするために、小柄なものを掛け合わせ、
ミニチュア・プードル → トイプードル → ティーカップ・プードルと、どんどん小型化していったからだ。
【2060年】
私は、制服の左胸ポケットから、「携帯プードル」のプー吉を取り出した。
仕事で煮詰ってくると、必ず、トイレで彼を取り出す。
手のひらで、無邪気に遊んでいるプー吉を見ていると、つかれも吹っ飛ぶ。
鳴き声もウンコも小さいし、持ち運び便利。本当に、携帯電話ぐらい、小さくてかわいい。
このコンパクトサイズがウケて、今や、誰もが、犬や猫など、超小型のペットを持ち歩いている。
「今度、携帯パンダも飼おうと思ってるの。プー吉と一緒に左右の胸に入れたら、Dカップぐらいに見えるかも」
化粧直しをしていた、超小柄な川本さんに話しかけた。
彼女は、今時めずらしく、何の動物も飼っていない。いや、もしかしたら、誰かに飼われているのかもしれない。
人間も、コンパクト化が進めば、彼女のような人がいても不思議ではないだろう。
川本さんは、私を見あげて言った。
「私やプードルが小さいんじゃなくて、街やあなたたちが、徐々に巨大化していってるのよ」