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【投資家インタビュー#1】投資先判断の4つのポイントと今後の期待ーGCP中村達哉さん(後編)

SUN METALONは2024年秋、シリーズAラウンドにて日米の投資家・金融機関より、総額約31億円(融資枠を含む)を調達し、調達額は累計で約45億円となりました。

前回の昨年のプレシリーズAラウンドに引き続ご出資いただいたグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社(GCP)プリンシパルの中村達哉さんと、SUN METALON日本法人代表取締役の瀧澤慶へのインタビューです。

後編では、前編に引き続き、中村さんが投資先を決めるにあたって重視しているポイントや、今後の期待についてうかがいます。

前編はこちら。


投資先を決めるときに注目する4つの観点

  クライメートテック、ディープテック領域での投資を決めるときに、特に何を見ていらっしゃいますか。

GCP・中村達哉さん(以下、中村)

何か新しい産業を生む起爆剤になるようなスタートアップが日本から出てほしいというのが、私の大きな投資テーマです。
SUN METALONにその可能性を強く感じたのが前回の資金調達(2022年のプレシリーズA)のタイミングで、まだ荒削りながら、その可能性を感じられるチームとテーマだと思い投資しました。

中村さんが投資の際に注目するポイント
① 産業構造を変えうるインパクトがあるか
② 実装の時間軸
③ プロダクトのユニバーサルさ
④ チームの実行力

① 産業構造を変えうるインパクトがあるか

まずは①産業構造を変えうるインパクトのある事業なのか。
バリューチェーン全体で新しい価値が出る、仕組みや物の流れが変わるといったダイナミズムの起点になるようなテクノロジー、ビジネスモデル、事業なのかという点に注目します。

金属業界は産業インフラとして不可欠な重要な役割を担う一方、世界のCO2の約10%を排出している環境負荷の極めて高い産業です[※1]。金属の生産プロセスを脱炭素化しようとすると新たな技術が必要で、大幅なコストアップが避けられません。金属産業は脱炭素化が最も難しい産業とも言われています
できるだけ金属の使用量・消費量を減らしたいというニーズが様々な産業で広がっている中で、SUN METALONは画期的な役割を担える可能性を秘めています

さらに、世の中のもの作りのあり方が変わる局面に差し掛かっており、その点でもSUN METALONの事業は重要な役割を担うでしょう。
一極集中で安い汎用品を大量生産し消費する資本主義構造から、環境負荷や地域ニーズに即したかたちでローカルエコノミーを回していくことが求められる局面に入っています。その観点でもSUN METALONのソリューションは面白いテーマです。リサイクルにおける地産地消ですね。

※1 参考:国立環境研究所, 2021年6月4日, 「炭素制約が世界規模での金属生産と利用にもたらす影響を推定」

② 実装の時間軸

次に、実際にインパクトを出すことが何より大事で、②実装していく時間軸が重要です。今すぐに出来上がっている必要はないのですが、ちゃんと社会実装まで到達できるテーマなのかということを見ています。

SUN METALONは注力事業をシフトしてからの3ヶ月で最小限のプロダクトを作り、顧客に対して基礎的な性能評価で仮説を証明することができました。正直ここまで早く成果を出せるとは思っていませんでした。

③ プロダクトのユニバーサルさ

それに付随して、③プロダクトのユニバーサルさ。顧客ごとにチューニングが発生すると、経営リスクを個々のプロジェクトに負うことになる。なるべく一つのものを多くの顧客に共通で売れるかどうかが大事です。

3Dプリンタの場合は、顧客ごとに作りたい部品や製品の仕様が多様なので、いくら柔軟性の高い3Dプリンタとはいえカスタマイズが発生したかもしれない。リサイクル事業はよりユニバーサルで、筋のいい事業テーマだと思います。

④ チームの実行力

最後に、これはディープテックに限りませんが、④チームの実行力。過去数十年、世界で勝てている日本の会社は歴史のある会社ばかりです。

技術で勝ってビジネスで負けるということはよくある。技術でもビジネスでも勝つ、なんならビジネスだけでも何とか勝ち抜ける。そういう力強さがあるチームであるということも大事です。

GCPプリンシパルの中村達哉さん

逆算型のアプローチで、見本事例の構築を

  当社は米国に本社を置くグローバルスタートアップとして駆け出しました。グローバルでの挑戦にあたり、初期で特に重要なポイントがあればお聞かせください。

中村
いかに初期にわかりやすいショーケース案件(見本事例)を作るかということですね。
クライメートの領域はマクロでは間違いなく広がる不可逆な流れがあると確信していますが、まだまだアーリーアダプターになってくれる需要家(大企業)が限られています

フックとなるような事例が作れれば、そこにフォロワーがついてくる。そういう事例が日本から出せるといい。SUN METALONの事業は、そういう逆算型のアプローチの良い事例を作れるテーマだと思います。

SUN METALON・瀧澤慶(以下、瀧澤)
いや頑張りたいですね。おっしゃる通りだと思います。
今回シリーズAでの資金をもとに、技術的な積み上げも大事にしつつ、そのような成功事例をつくっていきたいです。

SUN METALONの瀧澤慶・日本法人代表取締役

中村
フルスタックスタートアップという考え方があります。既存企業に依存せずに、自分たちの製品を届けるための資材やインフラなど、すべての要素をカバーする製品やサービスを構築するスタートアップを指します。
コア技術で一点突破できるということが見えた後に、そこから自分たちの領域外の分野の企業を買収したり、パートナーシップを組んでコンソーシアムをつくったりして、大きいバリューを作っていく。そのように統合型で、新しい産業の構造をデザインすることができるといいですよね。

  クライメートテックの領域は、今は後押しがありますが、今後ブレーキがかかることもありうるのでしょうか。

中村
どこかのタイミングで踊り場が来ると予想しています。2019年から3~4年の間でかなり投資が進みました。そこで投資した人たちは、その後5~10年で投資を回収したいという期待がある。
つまり2025年ぐらいに、「あれ、簡単じゃないぞ?思うようにできないな」という話が来るでしょう。今後は筋がいい事業と、ハードルの高い事業がわかってくるので、センチメント(市場心理)が厳くなる可能性はある。

ただ一方で、地球温暖化で米が不作になるなどの実害がどんどん出てくる中で、マクロな動きとしては不可逆なのは間違いない。短期的には揺り戻しがくると予想しますが、解決しなくてはならない課題として、消えることはないでしょう。

  今後に向けて、コメントをお願いします。

瀧澤
中村さんは、時に僕の意見を引き出し、寄り添いながら考えを整理してくださいます。
そして投資家の方には珍しく製造業をご経験されていて、経験者でないとわからない勘所をつかまれています。特に我々のような製造業のディープテック事業を進めていくにあたっては貴重な投資家さんで、ぜひ今後ともお付き合いいただきたいです。

そして今後は、チームの拡充も目標です。今のメンバーも、金属業界だけではなくいろいろな業種の人が集まっています。興味がある方には幅広くお話させていただきたいので、ぜひご連絡ください!

中村
瀧澤さんは、以前は西岡さんの右腕のような役回りでした。西岡さんが考えて決めたことを、どのように実現するかにフォーカスしていた。
今は瀧澤さん自身が、会社をどういう方向に持っていくかを考えている。そこの意識が明確に変わってきたように見えます。

私にとってSUN METALONはキャピタリストとして自立して投資をしたはじめての投資先です。思い入れも強いし、頑張ってほしいですね。期待しています!

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